勝ち抜く中小経営への強化書

事業承継で生まれ変わる-後継者による経営革新- 日本政策金融公庫総合研究所 研究員 鈴木 啓吾氏

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 そこで、事業承継を機に後継者が経営革新を果たした企業事例から成功のポイントを探りました。その結果、(1)先代がとらわれていたものに着目する、(2)後継者の特性を活かしてアイデアを生み出す、(3)手を尽くして先代や従業員の理解を得るという3つのポイントがみられました(図表3)。以下ではそれぞれについて事例を交えて整理しましょう。

図表3 後継者による経営革新のプロセス

資料:筆者作成

資料:筆者作成

先代がとらわれていたものに着目する

 後継者による経営革新のポイントの1つ目は、先代がとらわれていたものに着目し、それを変えることです。変えるものは「商品・サービス」「製造方法」「販売方法」「組織」などが挙げられます。今回はその中から「製造方法」を変えたA社の事例を見てみましょう。

 プラモデルの金型メーカーであるA社は設立以来、卓越した職人の手作業による精密加工技術を武器に多くの受注を獲得してきました。ところが、競合先との価格競争が激化していき、単価を下げなくては受注をとれなくなっていきます。売り上げを維持するために受注量を増やしましたが、これによって従業員に連日遅くまで作業を強いるようになってしまいました。

 この問題を解決するために、後継者が提案したのは3次元CAD/CAMの導入でした。しかし、手作業による加工こそが同社の強みだとこだわる先代や古参の職人たちから反対されてしまいます。そこで、一定の精度までの加工は新たに採用したオペレーターが工作機械で行い、それでは対応できない精密加工は従来どおり職人が行う分業体制をとることにしました。これによって先代たちの理解を得て、製造方法を改めた結果、製造コストを4割削減でき、従業員の作業負担も軽減することができました。

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