勝ち抜く中小経営への強化書

国内生産拠点のみで生き残るための戦略 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 森岡 功氏

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 もちろん、脱下請けで自社開発製品を目指すとか、全く違う業種に事業転換するという選択肢もあります。ただ、そこまで視野を広げると選択肢の幅が広がり過ぎてしまうので、あくまで既存事業での生き残りを図る場合の着眼点として整理したのが、3Q+Cです。

求められる経営者のリーダーシップ

 これら4つの領域すべてにおいて、海外生産拠点や国内の競合他社に対して優位性を確保できれば一番良いのですが、簡単な話ではありません。どれか1つを極めるのも決して容易なことではないでしょう。

 では、中小企業が優位性を確保するためには具体的にどうすればよいのでしょうか。個々の企業の事業環境が異なることから残念ながら万能薬はありませんが、国内生産拠点のみで成功している下請け中小製造業に共通していえる点が2つあります。

 第1に、ヒト、モノ、カネ、情報、社外リソースという経営資源を最大限に活用している点です。

 例えば、ある企業ではあえて入社前に本業の金属加工に縁のなかった社員を積極的に採用しています。経験がない人間はまずはやってみようという発想になりやすいためであり、入社して半年程度の新人にも積極的に難易度が高い経験をさせています。

 また、別の企業では外部機関と連携することで専門家を派遣してもらい、新たな製品開発に成功しています。つまり、社の内外を問わず活用できるものは貪欲に活用するというスタンスが重要です。

 第2に、「国内生産拠点のみで何としても生き残る」という経営者の強いリーダーシップがある点です。取材したほとんどの企業では、経営者がリーダーシップを発揮できる土壌として、経営理念や組織としての一体感、前向きな社風等が確立されています。「結局、最後は精神論か?」と思われるかも知れませんが、意志のない所には道は拓かれません。経営者の強いリーダーシップは自ずと社内に拡散し、従業員の士気を高め、想像以上の大きな力を生み出します。

 今後も幾多の経営環境の荒波が予想されますが、3Q+Cの実現に向けて、まずは今できることから始めてみましょう。

森岡 功(もりおか いさお)
日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員。1987年に一橋大学経済学部を卒業後、中小企業金融公庫(現・日本政策金融公庫)に入庫。1994年より興銀証券株式会社(現・みずほ証券株式会社)、ロンドン興銀(現・みずほインターナショナル)に出向した後、1995年より調査部(現・総合研究所)で中小商業・サービス業の設備投資動向等に関する調査・研究に従事。その後、支店勤務等を経て2008年10月より総合研究所で中小企業金融、産業動向に関する調査・研究に従事。

最近の論文に「中小卸売業の収益性に関する実証研究―2002年度から2012年度までの長期分析―」(『日本中小企業学会論集34』)、「海外展開しない中小製造業に関する実証研究―電子部品及び輸送用機械製造業に係るテキストマイニング分析―」(『日本中小企業学会論集33』)、「海外展開しない中小製造業に関する実証研究 -電子部品及び輸送用機械製造業に係る定量分析-」(『日本政策金融公庫論集』第24号)「中小企業の借入金利等の決定要因に関する金融機関業態による差異について」(『日本政策金融公庫論集』第20号)などがある。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、人事、人材、ものづくり、営業、マーケティング

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