勝ち抜く中小経営への強化書

「経営者の個性」こそ中小企業の武器 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 井上 考二氏

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 日本経済は長い停滞期間を経て力強さを取り戻しつつあります。復活の大きな要因として、他国には見られない「中小企業の厚み」があらためて注目されています。ただ、今後も強さを維持していくには、グローバル展開や人材育成、販売力の強化といった課題を克服していかなければなりません。競争に勝ち残るために何が必要なのか。中小企業の調査・研究を長年手がけてきた、日本政策金融公庫総合研究所の研究員らが提言します。

規模が小さいほど競合が多い

 規模が小さい企業ほど競争環境は厳しいといえます。規模の小さな企業はそうでない企業と比べて経営資源が乏しいだけでなく、ライバルの数という面でも不利な環境に置かれているからです。総務省「平成26年経済センサス‐基礎調査結果(速報)」から、業種(小分類)ごとの事業所数と1事業所あたりの従業者数とを調べたところ、1事業所あたりの従業者数が少ない業種ほど事業所の数、つまりライバルとなる同業者の数が多い傾向にありました。

業種(小分類)ごとの事業所数と1事業所あたり従業員数

資料:総務省「平成26年経済センサス-基礎調査結果(速報)」<br /></p><p>注1:「農林漁業」「公務」「管理,補助的経済活動を行う事業所」を除く民営企業で集計</p><p>注2:目盛りは常用対数で表示。常用対数とは10のn乗を表したもので、2のときの値は10の2乗=100、3のときの値は10の3乗=1,000となる。</p><p>

資料:総務省「平成26年経済センサス-基礎調査結果(速報)」

注1:「農林漁業」「公務」「管理,補助的経済活動を行う事業所」を除く民営企業で集計

注2:目盛りは常用対数で表示。常用対数とは10のn乗を表したもので、2のときの値は10の2乗=100、3のときの値は10の3乗=1,000となる。

 たくさんの同業者がいるなかで企業を維持・発展させていくには、「他社よりも低価格で生産・販売できる体制を構築すること」や「他社にはない付加価値を提供し優位性を打ち出すこと」が必要となります。しかし、規模の経済や範囲の経済を発揮しにくい中小企業が低価格を打ち出すことは簡単ではありません。商品やサービス、あるいは事業そのものについて、他社との違いを出すことが現実的な選択肢となります。

 では、どうすれば違いを出せるのか。ポイントとなるのは経営者の個性です。「十人十色」「蓼(たで)食う虫も好き好き」という言葉があるように、元来、人間の個性は多種多様なものです。中小企業は多様な存在だといわれていますが、それは、経営者の多様な個性が企業経営や事業内容に投影されていることが一因にあるのです。

 日本政策金融公庫総合研究所が従業者20人未満の企業を対象に行った調査では、同業他社との違いがあると回答した企業の83.6%が、その違いは代表者や従業員の個性(性格、趣味、特技、過去の経験など)から生まれていると回答していました。

 例えば、オフィス向けの宅配弁当を手がけていたA社は、創業10年目に、弁当の内容を一般的なメニューから無農薬の野菜や玄米などを使った健康に良いメニューに変えました。これは、経営者が1年半もの入院生活を契機に関心を持ち、実践していた健康によい食事を、ほかの人にも食べてもらいたいと思ったことが理由です。

 弁当という商品の性格上、顧客は食べ飽きると取引業者を変えてしまうため、以前は、常に新規顧客の開拓に追われていました。しかし、変更後は、安心して食べられる給食を探していた保育園や幼稚園と継続的に取引できるようになり、今では、園の給食用の弁当を専門に扱う企業として優位性を発揮しています。

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