勝ち抜く中小経営への強化書

越境ECの可能性とリスク 日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 竹内 英二氏

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 後者には米国のAmazonやeBay、中国の天猫国際や淘宝網(タオバオワン)があります。手続きは、それぞれの国の言語で行わなければなりませんが、集客力は日本企業が運営するECモールを大きく上回ります。なお、海外のECモールやオークションサイトへの出品を代行する事業者も存在します。

 こうしたモールやオークションサイトには、越境ECに必要なものがすべて揃っています。販売手数料やシステムの利用料はかかりますが、簡単に越境ECを始めることができ、AmazonやeBayなら、登録したその日から出品することも可能です。

インターネット広告の利用

 越境ECを始めることは容易ですが、いまやインターネットの世界には、膨大なECサイトがありますし、巨大なECモールのなかには無数の商品が出品されています。自前のサイトでも他社が運営するモールでも、消費者に存在を知ってもらわなければ売れることはありません。Googleや百度(バイドゥ=中国の検索エンジン)の検索結果で上位に表示されればよいのですが、簡単ではありません。

 そこで、重要になるのがインターネット広告です。インターネット広告にはいくつかの種類がありますが、中小企業でも使いやすいのはGoogleのアドワーズなど検索結果連動型の広告です。例えば、中古着物のECサイトであれば、kimonoやobiという言葉で検索されたときに、検索結果の上下や右側に自社のサイトを検索結果のように表示してもらうようにするものです。他の広告に比べて安価なうえに、商品に関心がある人に見てもらいやすいという特長があります。

不正利用や損害賠償のリスクも

 越境ECには、気をつけなければいけないことがいくつかあります。第1に、偽造されたクレジットカードの利用や正規カードの不正利用です。不正利用は、例えば子供が無断で親のカードを利用することで、多くの場合取引を否認されます。どちらも、頻発するわけではありませんが、いったん発生すると代金も商品も回収はまず不可能です。突然、高額な注文が入ったなど不審な注文があった場合には、身分証明書やクレジットカードの利用明細書のコピーを送ってもらうなどして、本人であることや偽造のカードではないことを確認する必要があります。

 第2に、損害賠償訴訟のリスクです。例えば、販売した服に針が残っていて、購入者がケガをしたといった場合には、訴えられる可能性があります。その場合、訴訟場所は消費者の居住国になります。賠償金だけではなく、渡航費用や弁護士費用もかかります。こうしたリスクは海外PL保険で、かなりの程度カバーできます。

 第3に、知らずに他国の法令に違反する可能性があります。越境ECで販売することは輸出することですから、相手先の国が輸入を禁じているものを販売することはできません。また、食品添加物や残留農薬をはじめ、日本とは異なる規制を設けている国も多く、基準を満たしていないものはやはり販売できません。日本貿易振興会(ジェトロ)のサイトなどで、販売先国の輸入規制を確認しておきましょう。

 第4に、商品の不着や破損が上げられます。海外への発送には、国際郵便や国際宅配便を利用しますが、どのサービスを使ったとしても、またどこの国に送る場合でも、一定の割合で商品が届かない、届いたが破損していたということが起こります。ECサイトには何の責任もないのですが、その事実を商品やサイトのレビューに書き込まれると悪評がたちかねません。代わりの商品をすぐに発送するなど、丁寧な対応が必要です。

竹内 英二(たけうち えいじ)
日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員。1982年東京大学経済学部を卒業し、国民金融公庫に入庫。1990年から調査部(現総合研究所)。海外進出、インバウンド、ソーシャルビジネスなど中小企業に関するさまざまな調査を担当。最近の著作(共著)に、『逆風下の訪問・通所介護ビジネス』(2016年、同友館)、『中小企業の成長を支える外国人労働者』(2017年、同友館)がある。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、人事、人材、ものづくり、営業、マーケティング

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