勝ち抜く中小経営への強化書

越境ECの可能性とリスク 日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 竹内 英二氏

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中小にとっての越境ECの魅力

 消費者向けの越境ECでは、衣類やアクセサリーから工芸品や骨董品、雑貨や雑誌、飲食料品、家電製品や中古車まで、さまざまなものが取引されています。とはいえ、どのようなものでも売れるというわけではありません。消費者が越境ECを利用するのは欲しい商品が自国では売っていない場合や自国で買うよりも安い場合です。また、ニセモノが多く出回っている国の消費者にとっては、ホンモノが買えることも越境ECを利用する理由になります。自宅に居ながら海外の商品が買えるというのは、消費者にとって大きな利点です。

ネットで買い物する人は増え続けている

ネットで買い物する人は増え続けている

 中小企業にとっても、越境ECにはさまざまなメリットがあります。まず、地理的な制約がないということです。インターネットに国境はありませんから、英語のECサイトをつくれば、米国や英国はもちろん、英語を理解する世界中の消費者を対象にすることができます。

 その結果、需要が散在していて、実店舗では採算がとれない商品でも事業が成り立ちます。例えば、中古の着物や骨董品は米国向けECにおける売れ筋の1つですが、購入するのは米国民のほんの一部にすぎません。しかも、その少数の人たちは特定の地域に集まっているわけではなく、米国のさまざまな場所に散在しています。着物や骨董品は日用品ではないので購入頻度も高くありませんから、現地に出店しても採算をとることは難しいでしょう。しかし、ECはインターネットがつながる場所ならどこでも商圏にすることが可能です。需要密度の低さは問題にならないのです。

 これらに加えて、越境ECは、海外に出店する場合や商社を通して輸出する場合に比べ、はるかに少ない投資額と短い期間で立ち上げることができます。越境ECは、資金や人手の制約が大きい中小企業でも取り組みやすいのです。

独自サイト作成か、他社サイト利用か

 越境ECを始めるには、大きく2つの方法があります。1つは、独自にECサイトをつくることです。日本語のサイトでも海外から注文が入ることはありますが、本格的に越境ECを始めるのであれば、やはり対象とする国の言語でサイトを作成する必要があります。自前のサイトですから、得た利益はすべて自社のものになりますが、代金の決済手段や配送方法の確保、受発注システムの開発、集客など、すべてを自分で行わなければなりません。これらを一からつくりあげるとなれば1,000万円以上かかることもあります。

 なお、近年は越境ECを支援するビジネスが盛んになっています。外国語サイトの制作はもちろん、外貨で決済できる買い物カゴや海外への発送代行など多くのツールが提供されており、必ずしもすべてを一からつくる必要はありません。

 もう1つの方法は、他社が運営するECモールやオークションサイトに出店・出品することです。このECモールやオークションサイトは、日本の企業が運営するものと外国の企業が運営するものとに分けられます。前者には「楽天グローバルマーケット」や「ジャパンショップス」「ディスカバリー・ジャパン・モール」などがあります。多くの場合、日本向けのモールのページを自動翻訳しただけのものであるため、商品説明が不十分であったり、そもそも翻訳されなかったりすることがあります。ただ、手続きや問い合わせは、すべて日本語で行えます。

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