勝ち抜く中小経営への強化書

介護人材の確保は「サービスの質向上」から 日本政策金融公庫総合研究所 研究員 山田 貴之

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 アンケートから介護記録を共有できているかと介護職員・登録ヘルパーの定着率との関係をみると、定着率が「低い」と答えた割合は、介護記録の共有を「十分できている」企業では6.0%であるのに対し、「あまりできていない・できていない」企業では17.5%と3倍近くになっていることがわかります(図5)。

 この結果からも、介護記録の共有をきちんと行うことが定着率を向上させる重要な要素であるとわかります。

介護事業所の取り組み事例

 ここまで、介護職員の定着率向上に必要な取り組みをみてきましたが、実際に、こうした取り組みを実践している介護事業所の事例を紹介しましょう。

 通所介護と訪問看護を営むA社は、利用者の日常生活を取り戻す作業療法を中心とした介護を実践しています。

 同社ではまず、利用者が入所すると時間をかけて面談を行い、日常生活での自立度だけではなく、その方の生い立ちから趣味まで詳細に把握します。利用者が大切にしてきた生活や、あきらめてしまった夢を理解することで、リハビリの目標を共有するためです。

 利用者とともに目標を立てると、介護職員は利用者にあった介護計画を個別に立てて、介護を実践します。利用者の状態は数値化し、介護記録に記載されます。それを見ることで、効果の有無を簡単に知ることができるのです。

 介護の結果は、介護職員全員で共有されます。効果が上がっていれば、他の利用者の介護にも応用し、逆に効果が芳しくなければ、職員全員で改善方法を検討し、新たなメニューを考えて実践します。目標を達成するまでこれを繰り返します。

 また、同社では、利用者とその家族も参加できるバス旅行などのイベントを実施しています。介護職員は、事業所の外で日頃の介護の成果を実感できますし、介護をしている姿を見た利用者の家族から感謝の言葉をかけられることも少なくありません。

 さらに同社では、職員の育成にも力を入れています。例えば、入社時にはコミュニケーション手法を学ぶ外部研修に全職員を派遣するほか、社長自身が積極的にセミナーや研修に参加し、そこで学んだことを介護職員に還元して技術や知識の習得を支援しています。

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