勝ち抜く中小経営への強化書

小さな工夫で大きな価値生む「プラスα」 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 渡辺 綱介氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

バリュー・チェーンを整える

 ここまでみてきたプラスαの取り組みを料理にたとえてみれば、定番の料理に旬の素材を1つ加えるイメージでしょうか。しかし、たんに素材を加えるだけではかえって全体のバランスが崩れてしまうこともあります。そういう場合は、少し塩を振って味を調える、加えた素材の色合いに合うよう盛りつける器を変えてみるといったひと手間が必要になってきます。

 ビジネスでも同様です。新たな要素をプラスした際に、自社のバリュー・チェーンに何らかの調整を施すことで、初めて効果が表れてくることもあるのです(図表2)。

図表2 バリュー・チェーンのイメージ

資料:筆者作成

資料:筆者作成

 おいしいご飯が手間いらずで炊ける土鍋を完成させたE社。実は、百貨店で販売を開始した当初はさっぱり売れなかったそうです。買い物客は、はじめて見る同社の土鍋の魅力がよくわからず、わざわざ重い土鍋を抱えて帰ろうとは思わなかったのです。注文が殺到するようになったのは、商品の特徴や使い方をわかりやすく伝えるカタログを作成し、全国各地から手軽に注文できる通信販売に切り替えてからでした。

自社なりのプラスαを見出す

 本稿では、小さな工夫で大きな価値を生み出している事例をもとに、プラスαの取り組みとして類型化し、その3タイプをみてきました。自社がどちらを向いて進めばよいのか悩んでいる場合には、本稿で取りあげた3タイプが参考になるのではないでしょうか。トレンドはやがて変化していきます。それでも、大きな視点から流れを見出し、自社のビジネスに反映するというアプローチの仕方は、役に立つものでしょう。

 そしてもう1つ、各社の取り組みに必ずプラスαされていた要素があります。それは、夢や理想です。世の中にどんな価値を提供したいのか。その軸をしっかりと定めたうえで、世の中のトレンドをとらえる。両者が交わったところにこそ、自社が加えるべき価値があるのかもしれません。

渡辺 綱介(わたなべ こうすけ)
日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員。2002年東京大学経済学部卒業後、国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫)に入庫。新宿支店、青森支店勤務を経て2010年より総合研究所にて中小企業の経営や景気動向に関する調査・研究に従事。現在は『日本政策金融公庫 調査月報』(https://www.jfc.go.jp/n/findings/tyousa_gttupou.html)の編集チーフ。論文に、「効率的に付加価値を高める小企業の取り組み」(『日本政策金融公庫論集第21号』2013年11月号)などがある。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、人事、人材、ものづくり、営業、マーケティング

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。