勝ち抜く中小経営への強化書

「時流」と「自流」で新市場を拓く 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 井上 考二氏

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(2)枠を外して視野を広げる

 時流を見つけるには、視野を広げることも欠かせません。人は、特別に意識していなければ、自分の関わる世界ばかりを見てしまいがちです。自ら事業の範囲を限定し、その内側だけを観察していると、外側にある時流を見逃してしまいます。これまでとは異なる市場を開拓しようとするならば、視野を広げ、事業と直接関係しない分野にも注意を払うことが求められます。

 その際には、取り引きしたことがない業界からの問い合わせに真摯に対応したり大学との産学連携に取り組んだりといった、異分野の人との出会いが大きな役割を果たします。また、思考の枠を外して、当たり前と思われている常識にとらわれないことも、視野を広げるうえでは重要です。

 自転車店を営むB社は、近所のお年寄りのために、軽く引けるリヤカーを開発しました。「リヤカーは時代遅れ」と多くの人が思っていたにもかかわらずです。しかし実際は、路上駐車の取り締まり強化や環境に配慮した企業経営といった時流への対応を求められていた宅配業者に、使い勝手のよいリヤカーに対する潜在的な需要がありました。

 B社のリヤカーを紹介する新聞記事を見た宅配業者から、大量の注文が舞い込み、自転車付きリヤカーの開発依頼もきました。リヤカーは時代遅れという固定観念や思い込みにとらわれずに開発したこと、そして大量の注文や開発依頼に真摯に対応したことで、B社は宅配業者という新たな顧客をつかんだのです。

自流を生み出すポイント

 うまく時流を見つけることができたら、その時流に関連する市場を探し、そこで自流を生み出せるかどうかについての検討が必要です。

(1)強みの源泉を理解する

 自流を生み出すには、まずは、自社の強みを知っておくことが大切です。オンリーワンの技術や特許、取得している資格などを確認するほか、得意なことやできることなどを整理します。そして、それらを可能にしているノウハウや経営資源の新たな市場における活用方法を考えてみます。

 製茶問屋を営んでいるC社は、消費者向けの小売り販売に進出する際、あまり知られていないお茶の魅力を伝えることに力を入れようと考えました。社長は日本茶インストラクターの講師の資格を持っており、お茶に関する知識が豊富でした。その知識をもとに、顧客の体質に合ったお茶や含まれている成分を効果的に摂取できる入れ方などを紹介したのです。単にお茶を売るだけではない接客は好評で、多くの顧客を獲得しています。

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