肖敏捷の忠言逆耳

中国、「14億総中流」のカギは劉鶴氏 SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト 肖 敏捷(しょう びんしょう) 氏に聞く

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アキレス腱は深刻化する都市と農村の格差問題

 ――習近平政権2期目の経済政策についてアキレス腱(けん)どこにあるでしょうか。

 「まず都市問題があります。収入の増加が生活コストの上昇に追いつかない都市部の『偽装中間層』は約4億人いるとみられています。生活コスト上昇の大きな部分は住宅価格です。北京市では過去12年間に1人当たりの可処分所得が約4倍上昇したのに対し、高級住宅地の価格は約13倍上がりました。

 「住宅にさまざまな権利が付いているために所得水準から乖離(かいり)しているのです。新中間層と既存の中間層とが摩擦を起こすケースも出てきています。都市住民の増加に伴って公共サービスの拡充も待ったなしですが担い手の地方政府の財源確保が厳しいため停滞しています」

 「農村と都市部の格差はもっと深刻です。戸籍上は約7億人が農民となっていますが、2.8億人は出稼ぎなどの形で農村を離れています。出稼ぎで子供を祖父母に預けたり、都市部で学校に行けずに田舎に戻らざるを得ない子供が増えたりしているため社会問題になっています」

 「都市部近郊の農村地域はインフラ整備が進む一方で、若者たちが都市に行って老人と子供しか残らない農村地域の荒廃も加速しています。中国における高校進学率は都市部で93%と米国の92%を超えるのに対し農村部は37%に過ぎません。貧農層が多い地域では0~3歳の子供を対象に半年ごとに行った追跡調査で、約半数の子供の知能の発達が遅れ、認知能力が低い傾向が観察された研究も出てきています。人間の量から質の転換を図らなければ経済成長の質への転換も難しいでしょう」

 ――日本企業は中国経済にどう対応すべきでしょうか。

 「中国では日本企業への関心が戻ってきています。量の拡大を目指しているときは日本への注目度は薄れていました」

 「一方、日本側は中国企業すべてを注目する必要はありません。10万社の企業があるとして9万9800社は日本にとって問題になりません。しかし残る200社は世界的な水準から見ても素晴らしい。ユニコーン企業も含まれます。日本が注目し真剣勝負するのはこの200社です」

(聞き手は松本治人)

肖 敏捷(しょう びんしょう)
1964年中国西安市生まれ。1994年から2010年まで、大和総研の本社及び香港や上海拠点で中国経済の分析を担当。2010年の日経ヴェリタスエコノミストランキングでは、中国経済専門のエコノミストとしては異例の5位にランクイン。独立系運用会社を経て、2013年7月、SMBC日興証券に入社し、現在に至る。著書に「人気中国人エコノミストによる中国経済事情」(日本経済新聞出版社)など。

キーワード:経営、企画、営業、管理職、国際情勢

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