肖敏捷の忠言逆耳

中国、「14億総中流」のカギは劉鶴氏 SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト 肖 敏捷(しょう びんしょう) 氏に聞く

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教育問題まで目配りする経済政策の「頭脳」

 「第2は深圳です。IT、AI(人口知能)、ロボットといった産業が展開しています。民間企業や個人が常に生き残りをかけたイノベーションを進めているからです。これらはゼロ地点からスタートしたから成功したとみています。既存のしがらみがなく、共産党が善かれあしかれ規制政策を取らなかったことが奏功したと考えています(笑)。自動車、通信機器といった国有企業ではこうしたイノベーションは困難だったでしょう」

 「第3は劉鶴・政治局員です。現在は習近平氏が政治や軍事、経済などすべての権力を握っています。経済分野で頭脳的な役割を果たすキーパーソンになりそうなのが劉鶴氏です。ここ数年、中国経済の構造転換を促すための政策作りに関わって存在感が高まっています。昨年の19大で政治局員に登用されました」

 「官庁エコノミストだった劉鶴氏はこれまで黒子的な存在でした。10年前の08年に中国経済の成功が積極的にグローバル経済に適応したのがひとつの原因だと指摘していました。しかし中国経済の奇跡は持続不可能で内需拡大とイノベーションの促進に軸足をおくべきだと提案していました」

 「内需拡大については中間層の拡大と教育やトレーニングによる人的資本の強化が不可欠だとも強調しています。中国のリーダーらは自分の5年、10年といった任期中に成果を挙げることを最優先します。教育問題のような長期的な課題に目を向けるケースはあまりありません。劉鶴氏は中国経済の先行きについても冷静な見方を持っています。今年3月の全人代(全国人民代表大会)では副総理への抜てきも下馬評にあがっています」

 ――日本に警戒心と期待が交差している「一帯一路」構想をどう見ますか。

 「先進諸国の経済成長の頭打ち感が強まる中で、新たな成長フロンティアとして、中国より所得水準の低い国や地域に市場を開拓したいということでしょう。『一帯一路』は66カ国・地域、約40億人、世界GDP(国内総生産)約30%をカバーする雄大な経済構想ですが、中国が意図しているのは緩やかな経済的同好会の幹事的な立ち位置とみます。トップリーダーとしてこれだけ巨大な地域をまとめる経験も能力も中国にはないはずで『中国ブロック経済』など成功しないのは中国人も知っているでしょう」

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