肖敏捷の忠言逆耳

中国の政策運営の大原則は「成長なくして改革なし」 SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト 肖 敏捷(しょう びんしょう) 氏

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 中国の政治経済動向を観察する際、中国の政府関係者やマスコミがどんなスローガンやキャッチフレーズを使っているのかに注目し、そこから情勢や政策の潮目の変化を読み取るのは、チャイナウォッチャーの腕の見せ所の一つだろう。

 2012年秋に習近平政権が発足してからの推移を振り返ると、2013年は秋の「三中全会」の開催を契機に「全面改革」のオンパレードとなった。2014年に入ってからは、「新常態」という聞き慣れない表現が登場し、いまやすっかり定着した。では、最近、中国ではどんなキャッチフレーズが流行っているのか。「全面改革」や「新常態」がマスコミなどに頻繁に登場している状況に変わりはないが、昨年と比べて明らかにトーンダウンしてきたように感じるのは、筆者の錯覚だろうか。

リーマン・ショック当時と同じキャッチフレーズが浮上

 中国の国家統計局が4月15日に発表した2015年1-3月期の実質国内総生産(GDP)は、前年同期比7.0%増と、2014年10-12月期の同7.3%増を下回ったものの、中国政府が掲げている7.0%という年間の成長率目標圏に踏みとどまった。世界的にみても、7%が高成長であるのは間違いない。しかし、このGDP統計発表を契機に、中国の政策決定者の間では緊張感が漂い始めた。

 例えば、毎週開催される国務院常務会議に関する政府側の発表内容をみると、構造調整や規制緩和など「全面改革」の進展とも受け止められる政策論議が少なくない一方で、「穏成長(安定成長)」という表現の登場回数が急増していることが分かる。

 直近の国務院常務会議で李克強首相は、「穏成長」について、今年の経済成長率及び雇用など年間目標の達成を確保するよう、関係者にげきを飛ばした。ちなみに、1997年のアジア通貨危機以降、並びに2008年のリーマン・ショック以降も、「成長確保」あるいは「穏成長」といったキャッチフレーズが頻繁に使われていた。

 では、このことは、現在の中国経済が危機的な状況に陥っていることを意味するのだろうか?確かに、GDP成長率をはじめ、新車販売台数の伸び率など、リーマン・ショック以来の低水準まで減速した経済指標は少なくない。しかし、外部環境をみると、ギリシャ債務危機など火種も少なくないとはいえ、アジア通貨危機やリーマン・ショックのような深刻な危機が勃発する懸念は当面見当たらない。片や中国国内の上海や深圳の株式市場では空前の株式ブームが沸き起こり、片や中国人観光客が世界中で「爆買い」を繰り返している状況を見ると、中国景気は危機的どころか絶好調ではないかと疑いたくもなる。にもかかわらず、なぜ、「穏成長」という表現が再び浮上してきたのだろうか?

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