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「貿易大国」から落ちた日本の進む道 日本総合研究所 調査部 大泉啓一郎・上席主任研究員に聞く

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 「ASEAN企業と組んで中国市場の掘り起こしを目指したケースが伊藤忠とタイ最大財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループとの資本提携です。CPグループの中国ビジネス界におけるネットワークを活用する狙いで、中国中信集団(CITIC)に共同で1兆2000億円を出資しました。華僑人脈を組み込むのは投資規制が厳しかった1970年代にはよく使われた手法でした。もちろん現在でも有力です」

次の海外戦略は「タイプラスワン」

 ――中国市場以外にもASEANを拠点として利用できそうですね。

 「イスラム諸国市場の名目GDPは約5兆1000億ドルで世界の約7%。中国の約半分です。日本からの輸入はまだ約3%と参入できているとはいえません。ASEANにはインドネシア、マレーシア、ブルネイにイスラム教徒が多く、親和性が高いことや輸送コストの安さからライバルの中国企業よりも有利な条件を備えています」

 「日系企業の中にはイスラム教の教義にのっとったハラル認証商品をサウジアラビアやバングラデシュに輸出しているケースも出てきています」

 「インド市場の攻略にも有望です。工業化の進展に合わせてASEANのサプライチェーン(供給網)がインドにも拡大する可能性が高いことを考えれば、とくに部品に関して市場開拓に備えておくべきでしょう」

 ――本書では「タイプラスワン」の戦略も説いています。

 「『チャイナプラスワン』は中国の政治的リスクなどから生産拠点を別の国に移動、増設する』といったものでした。『タイプラスワン』はタイの集積地はそのままに、労働コストがかさむ工程だけを低い周辺国に移転するというものです」

 「ラオス、カンボジア、ミャンマーの一般工職者の賃金は、まだタイの半分以下のレベルです。バンコクから半日の距離にある国境の工業団地を活用できれば、物流インフラの整備から始める必要はありません」

 「タイプラスワンはタイとラオス、カンボジアとの間で始まったビジネスモデルです。ミャンマーが本格参入すれば、同国の15~29歳の若年人口はタイを上回る1390万人と多く、現在は農業に従事しています。ミャンマーはタイプラスワンの労働力の供給基地として高い潜在力があります」

 ――ASEAN拠点の活用には日本本社からの権限委譲が必要ですね。

 「これまで日本から派遣される人々の多くは技術専門職でした。工場の立ち上げや生産拡大が重要な課題だったから当然ともいえます。今後は販売や総務、人事のノウハウを持つ人事を派遣して現地の『人づくり』を進めるべきでしょう

(聞き手は松本治人)

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