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「貿易大国」から落ちた日本の進む道 日本総合研究所 調査部 大泉啓一郎・上席主任研究員に聞く

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 ――日本は自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を進めてきました。米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」の早期発効も目指しています。大幅な輸出拡大への弾みがつくとの期待があります。

 

「しかし関税の撤廃や規制緩和は、もはや特効薬にはなりません。スマートフォンやパソコン、液晶パネルや半導体などの電子電機部門は韓国や台湾に圧倒されています。新興国ではデジタル技術を活用したビジネスが次々に立ち上がりつつあります」

 「日本製品の技術力は高く、ブランド力もあるのだから、関税引き下げで価格競争力さえ高まれば貿易大国に復活できるという構造はすでに世界にはありません」

 「実質的な通貨の価値を各国の物価水準をもとに計算した購買力の平価ベースGDP(国内総生産)では、新興国・途上国の経済規模はすでに先進国を追い越しています。特にアジアです。アジア開発銀行は世界におけるシェアが2010年の27%から50年には52%にまで上昇するという見通しを示しています」

ASEANから中国市場を開拓する

 ――グローバル経済での競争力を向上させることが必要ですね。

 「地理的な場所にこだわらず日本の生産力を生かす『メイド・バイ・ジャパン』を追求する時期にきています。注目したいのがASEANにおける生産拠点の集積です。生産面だけでなく、現地で新しいビジネス関係を発掘する権限とミッションを与えるべきと考えています。日本銀行の統計でみたASEANに対する直接投資累積額は、約11兆円で中国を大きく上回ります。主要国の首都圏周辺の工業団地に集中的に投資しているのが特徴で、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンの現地法人の経常利益は合計1兆7500億円と、全世界における日系企業の海外事業の18%を超えています」

 「特にタイにおける直接投資は累計約4兆円と中国の約半分です。投資先が中国では全土に拡散しているのに比べ、タイは9割以上がバンコク周辺に集中しています。単位面積当たりの日本の製造業の数は世界で最も多いでしょう。タイの在留邦人は約7万人で一時的な短期滞在も含めれば約14万人に達します」

 ――新著では「ASEANから中国市場を開拓する」というユニークな戦略を提示しています。

 「ACFTA(ASEAN中国自由貿易協定)によって中国はASEANにとって最も開かれた市場になっています。留保条件はあるものの、ACFTAの枠組みが日本に適用されれば日本から中国へ輸出する9割以上が無税となる計算です」

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