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他人の話を聴けなくなっていませんか? トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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「最後まで聴け!」と自分に何度でも言い聞かせる

 対策を考えてみたい。

 1つ目は、とにかく、「最後まで聴け!」と自分に何度でも言い聞かせることだ。これは自制心の強さに依存するため、必ずしも十分とは言えないかもしれない。でも、そう意識することは重要だ。

 2つ目は、相手の話に口をはさみたくなったとき、まずは「なるほど」と言うことだ。「なるほど」と思っていなくてもいいから、「なるほど」と言う。「でも」「だけど」「いや、違う」など否定的な反応をしがちな人ほど、とにかく「なるほど」と受ける。これは、もう「スキル」として割り切ってやればいい。

 これで相手の反応はきっと変わる。

 以前、こんなことを言っている人がいた。

 「いつも“それは違う”と言っていたら、部下が委縮して、意見を言わなくなってきたので、あるとき、決意して、反応の第一声は“なるほど”とすることにした。慣れないため、“それはちが・・・なるほど”と言うことが多かったが、2~3週間で習慣化し、“なるほど”がすっと口から出るようになった。そうすると、部下がいろいろ言うようになって、こんなに彼らは様々なことを考えていたんだ、と驚くとともに、自分も勉強になった。『なるほど』と言い続けていたからこそ、部下が色々な考えを持っていること、自分が聴いていなかったことに気づいた。いつも真っ向から否定していた自分が悪かった」、と彼は言った。「なるほど」と応じることで、一応、きちんと聴くことができるし、相手は「なるほど」と言われたことで、話を続けやすくなる。

 3つ目は「メタ認知」だ。メタ認知とは、自分の認知をメタ(高次に)に認知することを指す。“幽体離脱”して、自分自身の考えや言動を第三者的に把握するようなイメージだ。たとえば、「今、相手も話そうとしたのに気づいたけれど、自分の話をそのまま続けてしまった私」といったことを認識するのが、メタ認知である。

 「もう一人の自分」を自分の中に持つ。まずは、気づくこと、自らのコミュニケーションを客観視することだ。

 とにもかくにもシニアは、気づかぬうちにコミュニケーション力が衰えていることがあるので、まずはそのことに自覚的になって、自分なりの対策を練ってみてほしい。

 それにしても、若い頃は、上司が話すのを黙って聞かされ、いざ、自分がシニアになったら、自分の話を聴いてもらいたいと思っても、「傾聴が大事」と言われるとは!「じゃあ、昨今、シニアの話はいったい誰が聴いてくれるのだろう?」と少しだけ切ない。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 シニアは、話し始めると止まらないことがある。面談などのとき、上司であるあなたが話そうと思っているのに、ひたすら自分の思いや考えを述べるシニアがいるかも知れない。本文に書いたようなメタ認知ができるシニアであっても、「あっ」と気づくと話を止められなくなっているケースがある。

 上司としては、「話をちゃんと聴いてください」と言うしかないだろう。むしろ、上司という役割上、はっきりと指摘したほうがよい。

 そのとき、年上部下に対して、指摘するのに抵抗があれば、「アイ・ステートメント(I Statement)」という話法が役立つ。「I(アイ=自分)」を視点に据えて言い方を柔らかくするのだ。

 例えば「田中さん、(あなたは)話を聞いていませんよね」という言い方は、「あなた」を視点にしている。それを「田中さん、(私は)話を聴いてほしいのですが」「田中さん、(私は)話を聴いてくれるとうれしいのですが」といった「自分」を視点にした言い方に変えるのだ。いくらか素直に受け入れやすくなる。

 この「アイ・ステートメント」、相手が年上でなくても、誰に対しても使える話法である。
田中淳子(たなかじゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社
シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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