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他人の話を聴けなくなっていませんか? トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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シニアは相手の話を聴いていないことに気づいていない

 シニアにはこんな風に、相手の話をきちんと聴いていないことも、自分が話を横取りして、自分が話すばかりになっていることにも気づいていない人が多い。

 今でも管理職研修などで、シニアと接するとき、同じようなことを感じる。

 たとえば「3分間、相手の話を丁寧に聴いてみましょう。アドバイスする必要もないし、自分の考えを言う必要もないです。ひたすら、相手が“何を言いたいのか”だけに集中して、しっかり聴き切ってください」といった演習をすることがある。

 ところが、演習の開始30秒くらいで、聴き手だったはずのシニアが話し始めてしまうのだ。

 シニアは人生経験も仕事経験も十分ある。そのせいか、相手の話を聴きながら、自分の知識や経験と、すかさず照らし合わせながら、似たようなデータを引っ張り出すのだろう。そして、「自分の場合はこうだった」とか「私ならこうする」といったことを言いたくなるのだと思う。

 あるシニアがこう言っていた。「最後まで聴かなくちゃと思うけど、聴きながら、自分の考えが湧いてくると、どうしても話したくなる。なぜかっていうと、すぐ口にしないと、言いたかったことを忘れちゃうから(笑)」。なるほど、わからなくもない。

 人は、ある日突然シニアになるわけではない。毎日少しずつ歳を重ねてシニアになっていく。経験を重ね、知識や知恵も増えるが、肉体的に衰え、瞬発力も減少してくる。気づかないうちに徐々にシニアになっていく。そして自分のコミュニケーションの仕方が、かつて自分が「嫌だなぁ」と思っていたシニアのソレに近づくのである。

 そういえば、最近、私は「話し始めるとすぐには止められない」という現象を自覚している。誰かと同時に発話した場面で話をとどめることができないのである。

 先日、ひと回りほど年若い同僚と話していたが、同時に話し始めてしまう場面で、自分の話を止められず、最後まで言い切ってしまうことが何度かあった。若いころであれば、何か言おうとしてもすぐSTOPして、「あ、お先にどうぞ」と相手の発言を促していた。それが今は、頭では分かっているのに、口が止まらないのだ。頭からの信号が口先まで届くのに時間がかかるようになった、そんな感じだ。

 自分がシニアになってみてわかったのだが、たぶん、誰もが悪気は持っていない。自然に振る舞っている。しかし、若手から見れば、「聴いていないな」と思われるようになってきているのかも知れない。かつての先輩たちも同じだったのだろう。ごく自然にコミュニケーションについての認識がずれてくるのだ。ああ嫌だ、いやだ。

 シニアがかわいそうなところは、もはや誰にも何も指摘されなくなるという点にある。「話を聴いていないな」と思われていても、それを言いに来てくれる人はそうそういない。聴いていないから、論点のずれたアドバイスをしたからといって、そのことを誰も教えてくれない。まさに「裸の王様」である。

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