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「日大タックル問題」企業が学ぶべき教訓 エイレックス 江良俊郎社長に危機管理を聞く

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■準備は3段階、まず想定危機を洗い出し

――社員はどうやって身を守ればよいですか。

 「内部通報制度の活用や不正行為を指示する命令や発言を録音するしかない。組織内では風通しの良さが求められる。例えば、日産の完成車の無資格検査の問題(17年に発覚)では本社が『何とかして』と言う程度の要望をしたら、現場が工夫し過ぎてしまった…という感じだ。長年続く人事制度の弊害で、課長と現場の係長との間で意識の隔たりが広がっていたのかもしれない。本社の上層部が現場の声を吸い上げる施策が必要だが、口で言うほど簡単ではない」

――社員が上司の指示を記録したり録音したりすることが増えると自由闊達な意見交換が難しくなりそうです。

 「社員が録音すると決意するのは相当な不信感がある場合だ。内部通報制度で相談に乗る弁護士が社員に勧めるケースなどだ。何も起きていないのに日常的に会話を録音することにはならないだろう」

――報道やネットの書き込みで露見すると予想できても迅速に対応できない組織の病巣は何でしょうか。

 「いろいろなパターンがある。東レ子会社の製品データ改ざん(17年発覚)では、まずネットで書き込みがあり、週刊誌などに取り上げられ記者会見を開いた。そもそも発表するつもりがなかった、経営陣の感度が低い、調査に時間がかかる…など公表が遅れる事情は様々だ。事態の深刻さを客観的に判断できる人材が社内外に必要だ。私のもとにも不祥事を巡って発表すべきか否か迷う企業から相談が多い。企業の当事者と世間との意識のギャップを修正する機能が必要だ」

 「一方、判断を急いだため、かえって騒動になるケースもある。例えば、社員が個人的な犯罪で逮捕され容疑を否認している時に『解雇する』と発表したら人権侵害の恐れがある。記者会見のタイミング、出席者の人選など、企業にとって判断が難しい」

――国内外の企業不祥事で、発覚後の対応が評価できる事例はありますか。

 「ジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)の顧客情報流出(04年)は対応が速かった。初期対応に限れば、SUBARU(スバル)の無資格検査(17年発覚)を日経が報じた翌日の記者会見で、社長が『質問には全て答える』として長時間の質疑に応じ、日産の対応との違いを見せた」

――迅速対応のため、企業が平時から備えるべきことを教えて下さい。

 「準備は3段階で考える。まず、自社に起こり得る危機を特定する。長時間労働、セクハラなど業種を問わない問題から、メーカーなら品質問題、工場事故、データ改ざんなど特有の要素まである。次に、それぞれの危機を防ぐ施策を現場レベルで徹底する。最後に、一番重要なのは『それでも危機は起こる』と考えて準備することだ」

■マニュアルで危機レベル分類、記者会見の人選も

 「広報対応マニュアルは用意しておいた方がよい。不祥事発生時に対応を協議する危機管理委員会などを設け、各部門で誰が責任者なのか明確にし、連絡網で土日や深夜でも速やかに情報伝達できる体制を築く。危機のレベルを分類し『深夜でも社長に報告』『翌朝に報告』など対応を明記。記者会見を開く場合に登壇するのが社長なのか、不祥事を起こした事業部長レベルでよいのか…などと言った人選も決めておく」

 「こうしたルールを決めてしまえば、経営陣への報告が夜中や休日に必要となった場合でも気兼ねなくできる。また社内の上層部が記者会見に出たがらない場合などの退路を絶つ。その結果、対応の先延ばしを防ぐことにつながる」

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