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「日大タックル問題」企業が学ぶべき教訓 エイレックス 江良俊郎社長に危機管理を聞く

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 危険タックル問題でアメリカンフットボール部の監督らが辞任した日本大学。企業経営でも同じような不祥事に直面するケースがある。違法行為が発覚した時、上司から部下への指示を巡る調査で公表・謝罪が遅れたら、企業イメージを損なう。当事者の説明が食い違う場合の対処法や、不祥事が起きた時に迅速に対応できる組織づくりを、危機管理広報コンサルティングが専門のエイレックス(東京・港)の江良俊郎社長に聞いた。

■当事者間の主張食い違い、内部通報で証拠集め

――危険タックル問題を巡る日大の対応は、企業にとって他山の石となりますか。

 「組織のトップらが記者会見で謝罪する場合、自分の心の中の反省を吐露することが一番大事なのだが、日大の一連の記者会見は残念な内容だった。調査が続いているなどの事情があるにせよ、外部にどのような印象が伝わるのか、広報担当者も含めて読みを誤った」

 「企業不祥事でも同じだが、最近はこの手の記者会見でテレビの記者やリポーターの質問が増えている。テレビで強調されるのはアピアランス(外見・体裁)だ。謝罪する人の言動、態度、視線、服装などが描写され、例えば頭を下げたのが1秒だったら、話した内容よりその短さが強調される。インターネットテレビの中継は最初から最後まで配信することが多いので、登壇者は気が抜けない。起こした不祥事よりも、謝罪会見などの対応の方が注目されることを覚悟すべきだ」

 「日大の対応の遅さは企業なら起こり得ないレベルだ。最初の会見のタイミングまでに内部調査の結果を何かしら出すべきだった。多くの企業はコンプライアンス(法令順守)やガバナンスの指針を整え、内部通報制度などで情報を集めている。不正の当事者間で主張が食い違う場合への備えだ」

 「前監督の『指示』が焦点となっている日大のケースを企業に例えるなら、副社長の不正関与が疑われているようなものだ。外部の顧問弁護士を入れた調査委員会が不正の情報を確認したら、当該の副社長が調査中止を命じても続行しなければならない。日大の場合、このようなチェック体制が不十分でガバナンスが機能していない」

 「例外的だが、企業で調査が握り潰されそうになったケースがある。オリンパス粉飾決算事件(2011年発覚)だ。過去の会計処理を巡り調査を求めた社長を、取締役会が解任。その後、不正が発覚したが、社内からの通報もあったと聞く。現在、企業でここまで露骨なケースはほとんどない」

 「内部通報があった場合に、経営から独立した組織や顧問弁護士による調査に時間をかけ過ぎてはいけない。粉飾決算など案件によっては時間を要するが、その間に情報が社外に漏れると隠蔽していた印象を与えダメージが大きくなる」

――上司から部下への不正指示疑惑を巡り「それくらいの気持ちでやれという意味だった」という声を聞くことがあります。

 「東芝の不適切会計問題(15年に発覚)で経営陣が『チャレンジ』と称して現場に高い目標達成を迫ったケースなどが似ている。企業が目標達成のため現場に発破をかけること自体は珍しくない。問題は『違法行為をしてもよい』と受け取るか否か。組織内で居場所を失う恐れがある場合、現場が拒否することは難しい。現場が不正を強いられやすい立場であることに配慮すべきだ」

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