デジタルトランスフォーメーションへの道

ダイドードリンコがIoT自販機を8万台展開するワケ

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ハードルが高かったスマホアプリのダウンロード

 スマイルスタンドのスタートから約5万台の対応自販機が導入された現在までには、苦労も多くあった。

 まず、対応自販機は製造・運用にかかるコストの効率化が重要になる。スマホと自販機の間の通信方式としては、ブルートゥースという近接無線通信技術を採用した。スマホを自販機にタッチさせて情報をやり取りできるNFC方式も候補になったがコストが高くなることから見送り、より低コストなブルートゥースを採用している。ブルートゥースも通信の相性などからエラーが出てしまうスマホがあり、調整を重ねたという。

 対応自販機とシステムを遠隔的につなぐ無線通信技術には、IoT用途の低コストモバイル通信サービスを提供するソラコムのソリューションを採用した。「限られた予算の中で多数の対応自販機を展開することを考えると、通信コストが重荷になります。ソラコムのサービスが登場したことで通信費用を想定以上に抑えることができ、導入を後押しすることになりました」(西氏)。

 サービスを開始してからも、さまざまな壁に当たった。

 最も大きな課題は、専用アプリのダウンロード数がなかなか増えなかったことである。スマイルスタンドのサービスに消費者が気づくのは、サービスの内容を案内する自販機の前であることが多い。しかし、そこでスマイルスタンドを知ったとして、わざわざスマホに専用アプリをダウンロードしてから飲み物を買うのは面倒だ。西氏は「お客様がこんなに面倒がるとは思いませんでした」と振り返る。

 オフィス内に設置した自販機であれば、リピート利用も多く、アプリのダウンロード数が増えるだろうと考えたが、ここにも落とし穴があった。「オフィスで飲み物を買うとき、多くの人は財布や小銭しか持たずに自販機に来ることがわかりました。わざわざスマホを持ってきたいと思うようにしないといけないことを痛感しました」(西氏)。

 対策は幅広く検討・実施している。

 1つは対応自販機の拡充だ。どこに対応自販機があるかはスマホアプリから検索できるが、見つけたとしても50メートル、100メートル先の自販機まで足を運んでもらうのは難しいと見ている。どうしても対応自販機は増やしたいところで、当面の目標は前述したように8万台である。

 他社ポイントとの交換レートも課題だという。現行では約15本の飲料購入でLINEや楽天などのポイントと交換が可能になる。週1回1本の購入ペースの場合、4カ月近くかかる計算だ。こちらは引き続き対策を検討中である。

 西氏は、「利用実態は、プロジェクトチームが当初期待していた数値には達していないのも事実ですが、着実に伸びています。さらなるステップアップを検討しながら、ポジティブに考えていきたいと思います」という。

自販機への商品補充の効率化につながる

 これまで述べたように、スマイルスタンドのメーンの目的は、自販機経由の飲料販売において20~30代のヘビーユーザーを増やし、長期的に収益を向上させることであるが、一方で異なる方向における成果をすでに得ている。消費者の行動をデータで迅速に読むことができるようになり、業務効率化につながっているのである。

 西氏は、「自販機をオンライン化したことで販売数量の把握スピードが向上したことが、スマイルスタンドの拡大を後押ししています」と打ち明ける。これまで同社の多くの飲料自販機では1週間に一度の補充タイミングで、1週間分の販売データを得ていた。それに対してスマイルスタンド対応の自販機では、モバイル通信によって、日次で販売状況がわかり、より迅速で精緻な業務が可能になったという。

 特に、新製品の売り上げが日次で把握できるようになったことは大きい。「週次の販売データでは、トラックへの積載にしても、新製品は売れるだろうからたくさん積んでいこうといった勘や経験に頼りがちです。それが日次のデータになったことでより適切な積載へ変わりました」(西氏)。

 また、スマホアプリに性別や年代といった属性を登録してもらうようにしたことで、消費者の購入状況をよりきめ細かく把握できるようになった。購入者の属性がわかれば、その属性に対して求められる情報を提供することも可能になる。具体的な施策は検討中だ。

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