デジタルトランスフォーメーションへの道

ダイドードリンコがIoT自販機を8万台展開するワケ

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 ジュースやコーヒーの飲料メーカーの自動販売機における販売促進策が転換期にある。多くは「何本買ったら1本無料提供」といった即物的な内容だが、一風変わった施策を展開しているのがダイドードリンコだ。スマートフォンと自販機などを連携させる「スマイルスタンド(Smile STAND)」という自販機サービスにより、ドリンク以外の幅広い商品の提供や他社ポイントサービスとの連携などを行う。

 同社がスマイルスタンドの提供を開始したのは2016年4月。コンセプトは「毎日、明日が楽しみになる」で、スマホを近づけたときに近距離無線通信を行う、モバイル無線ネットワークを介してダイドードリンコのシステムと遠隔通信を行うといった、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの技術を活用して実現。対応自販機の設置台数と範囲を徐々に拡大している。

 ダイドードリンコの2017年会計年度末に当たる2018年1月20日時点では、同社が全国に保有する約28万台の自販機のうち約5万台がスマイルスタンドに対応しており、2019年1月中に約8万台へ増やす計画である。

ヘビーユーザー「予備軍」である20~30代の少なさに危機感

 スマイルスタンドを開発したきっかけは、自販機による飲料販売がマイナス傾向になったことだった。同社 経営戦略部で事業開発グループ アシスタントマネージャーを務める西佑介氏はこう語る。「24時間いつでも買えるという自販機ならでは価値は、今や24時間営業のコンビニエンスストアやスーパーマーケットでも提供されています。国内飲料売上高の8割以上を自販機経由が占める当社にとっては、自販機に新たな価値を持たせる施策が不可欠でした」。

 かつては飲料とタバコの自販機が並んでいることが多く、タバコといっしょにジュースやコーヒーといった飲料が買われていた。しかし2008年に成人識別ICカードがタバコ自販機に導入されるなどがきっかけになり、タバコ自販機の設置台数は急減。喫煙率の長期的な低下もあり、「タバコのついで買い」には期待できなくなった。ダイドードリンコでは2000年前後から「自販機を利用するお客様へ恩返しがしたい」「当社の大切な“店舗”である自販機を通じてお客様とコミュニケーションをとりたい」という思いから、飲料を1本買うと抽選でもう1本もらえるルーレット、ポイントをためると景品がもらえる自販機用ポイントサービスなど、特典商品提供機能を備えた自販機を開発・導入していたが、次の一手を考えるべき段階にきていた。

 そうしたなか、2018年度までの中期経営計画の目標達成に向け、自販機経由の飲料販売強化に対するさらなる取り組みの検討が2014年末に開始される。自販機経由で販売される飲料市場の縮小スピードを考えると、短期間で実施できる新たな施策が必要だった。

 そこでダイドードリンコは、1人当たりの飲料消費量が多いヘビーユーザーに着目。その消費行動に関する調査を行うが、結果は驚くべきものだったという。

 「飲料業界では自販機メーンのヘビーユーザーに30~50代の男性が最も多いとされています。しかし、当社については30代のお客様が思ったほど多くありませんでした。また、衝撃的だったのは、20代のお客様の利用頻度が非常に低かったことです。20~30代のお客様はヘビーユーザーの予備軍ですので、大きな危機感を抱きました」(西氏)。

 20代の顧客の自販機利用頻度が低い理由はコンビニに加えて、価格が安いドラッグストアやスーパーで飲料を購入することが多いことだと推測されたが、ダイドードリンコはコンビニなどにも商品を納入している。「コンビニなどからお客様を奪うだけでは意味がありません。飲みたいときに20代~30代が自販機を自然に使えるよう、きっかけを作って、市場全体を広げる――、その方法としてスマホを使った独自自販機サービスの展開を考えました」と検討当時を振り返る。

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