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文系でも分かるブロックチェーン メディアスケッチ代表取締役兼サイバー大学客員講師の伊本貴士氏に聞く

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 ■相手の取引履歴、品質、評価など記録

 なぜそのような世界になるかと言えば、ブロックチェーン技術が普及すると「取引」というものは、仮想世界での契約(いわゆるスマートコントラクト)で成立するからです。仕入れ、発注、業務委託、全て仮想世界で済んでしまいます。

 取引相手の仕事に対する品質や信頼性は、全てブロックチェーン上に記録されています。これまでの取引履歴、成果物の品質、使った素材の内容、もしかするとこれまで受けた評価までもブロックチェーン上に記録されています。その履歴をトレースすれば、相手がどのような企業(もしくは個人)なのかが、分かるのです。

 極端に聞こえるかもしれませんが、要するに適正な価格で、それに見合った仕事をやってくれれば、相手がどこの国の誰であろうが構わないというわけです。

 実際に、インターネットの世界ではこのようなことが既に起こっています。例えば、Webサイトの制作やデザインの場合、クラウドソーシングというサイトで企画書をアップロードすれば世界中のWebデザイナーがそれに対して応募してきます。そのうちの一人を選んで発注すれば、それに応じてWebデザイナーが成果物を作ってくれます。そのWebデザイナーが、どこの国の、何歳の人かは関係ありません。他の例として、Uberが世界各地で事業展開する配車サービスもあります。目的地で決まった価格で運んでくれれば、ライドシェアでも、どこのタクシー会社でも、個人タクシーでもいいわけです。

 ブロックチェーンの技術が進めば、企業や個人が日々行う様々な「契約」や「取引」というものが、すべて仮想世界で完結しスムーズになる可能性があります。私は様々な企業に赴いて技術的な視点から経営上の問題点を見ていますが、多くの企業は営業や契約、発注、受注などの事務作業に多大なコストをかけています。それが、全てなくなると考えると、いかに世界が効率的になるかがよく分かるかと思います。

 さらに進むと、全ての取引は自動化される可能性があります。そうなれば、社会の生産活動はほぼ自動で動くかもしれません。ロボットが働き、受発注や契約などの事務作業は人工知能がブロックチェーンの仕組みを活用してすべて自動で行うという世界が、SFの世界ではなく現実となる可能性があるのです。そこに必要な人間は、システムを見守る管理人だけです。

■多数のコンピュータに分散しデータ保存、改ざんは至難の業

 ここで、技術的な視点でブロックチェーンを考えてみます。前述したように、ブロックチェーンはこれまでにはない価値をいくつも社会に提供してくれる可能性を秘めています。ただし、その可能性をすぐに理解するのは容易ではありません。なぜなら、ブロックチェーンは基盤技術であるため、その価値はかなり“技術的な”価値であり、一般の人が直接感じる価値ではないからです。

 例えば、ブロックチェーンはいわゆるデータベースの役割を果たすわけですが、一般のデータベースと違って、チェーンネットワークに参加する多くのコンピュータに分散してデータを保存します。仮に100台の端末がネットワークに参加した場合、100台にデータが保存されているということになります。そのうちの1台のデータが改ざんされても99台には元のデータがあるので、どっちが正しいデータかすぐに分かるわけです(少なくとも50%超、この例では51台以上のデータを同時に改ざんすると、「改ざんを成功」できるという問題は残りますが)。

 現実にビットコインのネットワークには、世界中のコンピュータが参加しデータを分散しています。そのため、データを改ざんするのは至難の業です。その他にも、改ざんを検出する仕組みなどがあり、要するに「データの改ざんがかなり難しい」と考えられるというわけです。ブロックチェーンにはシステム運用のコスト削減など様々なメリットがありますが、一番大きいのはこの「データ改ざんの困難さ」と考えてよいでしょう。

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