仕事のストレスや人付き合いでのすれ違いなどで、イライラしてしまうことは誰にもあること。ただ、その怒りを抑えきれずに爆発させて、失敗してしまうことは社会人として避けたい。自分の怒りをコントロールするにはどうしたらいいか、日本アンガーマネジメント協会の担当者にノウハウを伝授してもらった。第1回は安藤俊介代表理事。
■第1回:傷つけない・壊さない 3つのルールを守って怒る
■第2回:職場での叱り方のコツ 「してほしいこと」を具体的に
■第3回:パワハラ防止のために組織が考えるべき2つのポイント
■第4回:部下にイラッ、相手との「~すべき」のズレと理解せよ
■第5回:チーム内のイライラ、互いの「境界線」知って解消
米国で発展、21世紀に世界に普及
アンガーマネジメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
アンガーマネジメントとは、1970年代に米国で生まれた「怒りの感情とうまく付き合うための心理教育」です。
もしかすると怒らなくなる方法や、イライラしなくてすむ方法などのイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、アンガーマネジメントの目的は決して怒らなくなることではありません。怒る必要のあることは上手に怒ることができ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになる。その線引きを自分でできるようになることを目標としています。
当初はドメスティックバイオレンス(DV)の加害者や、人種差別を受けたことで暴力行為を繰り返してしまう犯罪者のための矯正プログラムなどとして発展しました。
米国で最初にアンガーマネジメントが注目されたのは、1970年代後半から1980年代前半にかけてです。当時、車の運転中に割り込みや追い越しに腹を立て、あおり運転など過激な報復行動を取る「ロード・レイジ(road rage)」が大きな社会問題となりました。車の運転中のいざこざから射殺されるような事件が続いたからです。
その後、2001年の米同時テロ事件以降、社会不安の増大を受けて、英語圏を中心に一気に普及していきました。
現在では、企業研修や医療・福祉、青少年教育、人間関係のカウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングなど、様々な分野で活用されています。
企業研修で活用される理由としては、欧米では怒りの感情のコントロールができない人は人として未成熟で、管理職になるのは不適切と考えられているからです。また、パワハラなどに対する社会の目が厳しくなっている、というのも大きな要因です。
教育の分野では、米ロサンゼルスでは約400の小学校の授業にアンガーマネジメントが組み込まれています。
また、一般的な人間関係のカウンセリングや夫婦(カップル)セラピーなどにも、アンガーマネジメントが取り入れられています。