東大卒棋士のAI勝負脳

「藤井聡太」が2手目を変えない戦略と情報選択 将棋棋士6段・片上大輔

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 将棋の初手は、飛車先を突くか角道を開けるか、いずれかが有力とされる。2手目も同じ。この2×2の組み合わせ、それにあと1~2手を加えると、その将棋の大まかな「型」が決まってくる。

■後手番49局中、49局全てで飛車先を突く

 藤井聡太新7段は、これまでの公式戦で2手目(後手番の第1手)に必ず飛車先の歩を突いている。7段昇段を決めた今月18日までの後手番49局中、49局全てがそうだった(千日手局を含む)。

 昨年度の羽生善治竜王が2手目に飛車先を突いた割合は30局中15局で採用率はちょうど5割、佐藤天彦名人は21局中12局で約57%だった。プロの公式戦全体で見た場合は45%ほどである。 実は藤井のようなプロ棋士はかなり珍しい。若い頃からどんな戦法でも指してみようと意識的に努めてきた私などからみれば、もっと色々な指し方を試してみたいと思わないのかと不思議に思うほどだ。これまでプロは何でも指すのが当たり前だと思って、奨励会時代から努力してきた棋士は少なくないだろう。こうした点も、先輩世代にはなかったデータ処理や人工知能(AI)との結び付きが影響しているようだ。

 2手目に飛車先を突くか、角道を開けるか、もちろんそれ以外の手もあり、どれが最善かは分からない。ただし飛車先を突くことで、たとえば「振り飛車」や「横歩取り」のような、プロ間で流行している極めて有力な戦法の選択を自ら放棄することになる。

 「振り飛車」は久保利明王将や菅井竜也王位が好んで採用する戦法で、2人のタイトル獲得の原動力になった。「横歩取り」も佐藤名人や中村太地王座ら得意としているトップ棋士が多い。羽生竜王はその両方の戦法を自在に使いこなす。しかし藤井は、こうしたタイトル獲得に直結しそうな選択肢に目をくれることなく、それでいて極めて高い勝率を挙げている。これは実に驚くべきことだと思う。

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