東大卒棋士のAI勝負脳

藤井聡太と「羽生世代」の違うポイント 片上大輔・将棋棋士6段

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 藤井聡太6段(当時4段)の連勝中の対局を観戦していて、印象深かった場面がある。昨年5月の阪口悟5段との終盤戦、普段は表情を変えない藤井が、自分の敗勢を自覚した時に怒りや悔しさのような感情を露わにしたのだ。「デビューしてから20回以上も続けて勝っているのに、たった1つの負けでここまで悔しがれるものなのか」ということが私にとっては驚きだった。(しかもこの1局は、結局大逆転で藤井が勝った)。

■「負けず嫌い」は棋士に欠かせない才能

 「負けず嫌い」であることはそれ自体、棋士になるための欠かせない才能のひとつであると私は考えている。この点で藤井はこれまでの一流棋士たちともよく似ている。谷川浩司9段が子ども時代に、兄に負けて悔しがって駒をかじったというのは聞いたことのある方もいるだろう。私と同じ広島将棋センターで修業した山崎隆之8段や糸谷哲郎8段も、子どもの頃は負けて泣いてばかりいた。藤井も小さいときはとにかくよく泣いて悔しがっていたそうだ。

 修業時代に私は羽生善治竜王の記録係をよく務めたが、三浦弘行9段との一局で千日手(引き分け再試合)になった際、「鬼」の形相で部屋を出ていくシーンを目にして驚いたことがあった。普段あれほど淡々としている羽生竜王も、やはり内に秘めたものがあるのだなと思ったものだ。何か指し手の内容で納得いかないところがあったに違いない。ちなみにその将棋の指し直しは羽生快勝。終局後はいつもの表情に戻っていた。

 現在の藤井の場合も同じで、時に感情がにじみ出るのはどうやら負けを悟ったことが理由ではなく、自分のミスを自覚した時であるとその後観戦を続けていて分かった。連勝記録がストップした佐々木勇気6段との対局のときは終局後非常さっぱりした様子であり、対照的に深浦9段との昨年末の叡王戦では悔しさを隠そうともしない表情がネット上などで話題になった。

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