ビジネス書の目利きが選ぶ今月の3冊

GWにお薦め「リーダーの失敗学」3冊 橋本忠明「TOP POINT」編集長

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 そのひとつに「柔軟性をなくす」がある。1939年、ペプシコーラ社は、値段を変えずに量を倍増したペプシを売り出した。安いために当然人気が高まったが、コカ・コーラは動かなかった。量が倍なら、コストが高くなるのですぐに倒産すると考えたのだ。だが、倒産しなかった。それどころか、ペプシの売り上げは急増し、逆にコカ・コーラの売上が急減した。55年になってようやくコカ・コーラ社はキングサイズの容器を売り出した。

 この事例から、キーオ氏は「状況が変わったのに、頑固にそれまでのやり方を守り通す。そうしていれば、失敗する」と結論する。

 「自分は無謬だと考える」失敗は日本の組織社会にも大いに参考になりそうだ。99年、ベルギーで何人かの子どもが体調を崩し、その前に飲んだコカ・コーラが疑われた。同社は少しだけ調査し、自社の商品が病気の原因ではないと結論を出した。自分たちは無謬だと考えたのだ。

 確かにコークは汚染されていなかったが、世間の見方は違った。結局、経営陣は危機が起きた日に取るべきだった行動をせざるを得なくなった。商品の回収である。著者は言う「失敗する確率を高めたいのなら、自分の判断はいつも完全に正しく、間違っている可能性などないと主張すればいい」

 「部下を遠ざける」もある。ごく少数の側近と、ゴマすりや太鼓持ちで周囲を固めることを指す。 日米のみならず世界中で通用するだろう。

■「なぜリーダーは「失敗」を認められないのか」

 「ひどく歪んだ現状認識」が失敗の原因だという指摘に加え、現実を認めない、つまり現実を「否認」することも大きな失敗の要因である。それを詳述しているのが「なぜリーダーは「失敗」を認められないのか」(リチャード・テドロー著・日本経済新聞出版社)である。

 企業も人も、自分に都合の悪いものは、しばしば「否認」する。明白な事実を無視するのはなぜか? 単にそれと向き合いたくないからだ。自社の市場シェアが低下しても、「一時的な現象だ」とその事実を無視したりする。しかしこうした態度は「最終的にはほぼ確実に破滅につながる」。こう述べる著者が、否認が原因で危機に陥った有名企業の事例を分析し、否認を避けるための「8つの教訓」を引き出している。

 本書にはこんな話がある。 2008年3月、ニューヨーク州知事エリオット・スピッツァーは、ホテルに高級娼婦を連れ込んだところを目撃された。このスキャンダルのために辞任に追い込まれたスピッツァーは、テレビのインタビューで「あんなことをしたらいずれ明るみに出ると、なぜ思わなかったのか?」と聞かれて、こう答えた。「確かに、見つかったら…ということは頭をよぎりました。でも、明白な事実に向き合いたくないがために、それを無視してしまうことも、人生ではよく起こりませんか?」 。これが「否認」である。

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