天下人たちのマネジメント術

「ミスター円」が読み解く幕末・維新

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 

 今年は明治維新から150年。西郷隆盛ら幕末のヒーローが改めてクローズアップされる一方、近代日本を建設した明治政府の役割を見直す動きも出てきている。1990年代に財務省の国際金融局長、財務官として米欧と世界的な通貨政策をリードし「ミスター円」と異名を取った榊原英資・青学大特別招聘教授は、江戸幕府の国際政策を再評価した新刊「書き換えられた明治維新の真実」(詩想社)を出版した。「政治・経済と歴史は一体」とする榊原教授の着眼点は、現代の国際ビジネスの現場にもヒントを与えそうだ。

■明治「維新」でも「革命」でもなく「禅譲」

 ――新刊の内容は「明治維新はなかった」と刺激的です。徳川時代から明治時代へ移行は、革命も維新もなく「禅譲」だったと説いています。

 「1853年にマシュー・ペリー提督が来航して以降、江戸幕府は開国へかじを切り、明治政府は幕府の国際政策をそのまま引き継ぎました。徳川家自体も新時代に公爵家として存続し、本拠地の江戸城総攻撃も中止です。日本は明治維新で一新したような歴史観が語られがちですが、実情は継続性が強かったのです」

 「一国の歴史がある時期に突然大きく変わることはあり得ず、日本の文化や伝統は江戸時代から明治、大正につくられたものが多い。現代の政治経済や国際ビジネスを考える上でも、歴史の継続性を考慮することは重要です」

 ――本書ではペリー来航時の老中首座だった阿部正弘を、近代日本の基礎を作った人物として高く評価しています。25歳で老中に昇った体制の申し子のようなエリートです。

 「開明派の阿部こそが、近代日本の基礎を築いた人物でしょう。鎖国政策を転換しただけではなく『安政の改革』で講武所、海軍伝習所、海防局、蕃所調所などを創設しました。後の陸海軍、外務省、東大につながっていきます」

 「岩瀬忠震や大久保忠寛ら対米交渉を担う人材の大胆な抜てき人事を進めたのも阿部です。岩瀬は米側の要求をかなり跳ねつけるなど、相当厳しいタフ・ネゴシエーターでした。阿部は人材養成のための『仕進法』と呼ぶ能力本位の教育改革もスタートさせました。個人としての心構えなど普遍的な教えを説き現代の義務教育につながるものでした」

 「57年に39歳で急死しましたが、海外派遣も提唱しており、後に勝海舟、福沢諭吉の『咸臨丸』による渡米に結実しました。ちなみに阿部は、私が財務官として仕えた宮沢喜一首相の出身地である福山藩の大名でした(笑)」

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。