勝ち抜く中小経営への強化書

情報サービス業者 生き残りへの取り組み 日本政策金融公庫総合研究所  研究員  楠本 敏博

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身近にあるヒント

 今後、厳しい経営環境が見込まれるなか、中小情報サービス業者は下請け依存から脱却するために、どのように自社開発の製品やサービスを提供していけばよいのでしょうか。

 そうした製品やサービスを開発するに当たっては、まず、どのような分野が有望か、どのような技術が必要かといった情報の収集が必要になります。ヒアリングした企業をみると、地元の団体の要望やエンジニア同士の集まりから、新たなシステムを開発するためのヒントを得ている例がみられました。

 A社は、大手システム開発会社の1次下請けです。官公庁や学校向けに給与を計算したり、請求書を発行したりするシステムの開発を手がけています。同社が自社製品の開発に取り組むようになったきっかけは、ある会合で、地元の幼稚園の園長から、事務作業を効率化できるシステムを開発してもらえないかとの相談を受けたことです。詳しく聞くと、その幼稚園では、職員が子どもの成長記録や指導計画などを手書きで作成しているといいます。

 そこで、同社はそれまで受託開発で培った設計のノウハウを基に、園や園児、家族の情報を一元管理できるよう、クラウドを活用したシステムを開発しました。タブレットの画面上で事務作業のほとんどをこなせ、職員の作業時間を大幅に短縮できることが評判を呼び、現在では全国1000以上の幼稚園や保育園で導入されています。

 情報サービス業では、会社の枠にとらわれないで、エンジニアが興味ある分野や技術を議論するコミュニティー活動が活発だといわれています。そうした横のつながりで得た技術情報を基に、事業化に成功したのがB社です。同社は創業以来、大手システム開発会社と連携し、インターネットバンキングをはじめ金融機関向けのシステム開発を手がけています。2000年代に入り金融機関の再編が進むなか、自社開発の製品やサービスを提供しようと、さまざまなプロジェクトを企画しました。

 しかし、多くが採算を見込めず取りやめとなるなか、活路を見出したのが、アジャイル手法を用いたシステム開発です。アジャイル手法とは、ユーザー企業と共同で、工程ごとに設計やテストを行うものです。従来の手法では、ユーザー企業と全体の設計を擦り合わせてから開発に着手するため、設計期間が長期化したり、仕様変更があっても後工程になるほど対応が難しくなったりします。一方、アジャイル手法はそうしたデメリットを解消できることから、当時、業界で注目されるようになっていました。

 ただ、事業化するに当たっては、社内やインターネットの情報だけでは不足します。そこで役立ったのがコミュニティーでの情報収集活動でした。アジャイル手法を手がけていくうえでの問題点を議論したり、他社の開発での失敗事例を学んだりして、2006年に事業を開始。現在では大手企業からの受注も獲得し、売り上げを伸ばしています。

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