勝ち抜く中小経営への強化書

情報サービス業者 生き残りへの取り組み 日本政策金融公庫総合研究所  研究員  楠本 敏博

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業界の裾野を支える中小企業

 情報サービス業が成長している要因として、多くの企業が業務の大幅な効率化に向け、情報システムを増強させてきたことが挙げられます。情報サービス業にはどのような特徴がみられ、中小企業はどのような位置づけにあるのでしょうか。

前出の「平成24年経済センサス活動調査」で従業員規模別に企業数をみると、中小企業(※3)に該当する従業員299人以下の企業は情報サービス業を構成する小分類「ソフトウェア業」で97.6%、「情報処理・提供サービス業」で98.8%を占めています。

(※3)中小企業関連立法においては、ソフトウエア業・情報処理サービス業は、資本金3億円以下または従業員300人以下を中小企業としています。

 また、独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2014」で、ソフトウエア業者、情報処理サービス業者といったIT企業の受託開発に占める1次請け(元請け)の売り上げ割合をみると、従業員数が30人以下の企業では「0~30%」が41.1%となっており、従業員規模が小さい企業ほど、1次請けの割合が低くなる傾向がみてとれます(図3)。これは、元請けの企業が受注したプロジェクトを、専門分野に応じた複数の中小企業が下請けとして分担して対応していることの表れといえます。

図3 IT企業の受託開発に占める1次請けの売り上げ割合

厳しい環境変化

 多くの中小企業が下請けとして業界を支えているわけですが、今後、中小情報サービス業者の受注を脅かす2つの要因が考えられます。

 1つ目は、クラウドコンピューティング(以下、クラウド)の普及です。クラウドとは、従来、利用者が自身のコンピューターで行っていた情報処理を、インターネットを通じて行うものです。サーバーをはじめとした情報機器を所有することなく、顧客管理や財務会計などのアプリケーションを利用することが可能となります。

 クラウドにより、ユーザー企業では保守や運用のコスト削減、システム開発期間の短縮といったメリットが期待できる一方で、これまで顧客からソフトウエアの開発を受託したり、稼働しているシステムや機器の保守を手がけたりしてきた情報サービス業者にとっては、受注の減少につながるおそれがあります。

 2つ目は、オフショア開発の進展です。オフショア開発とは、開発コストを抑えるため、ソフトウエアやアプリケーションなどの開発を海外企業に委託するものです。近年では中国やインド、ベトナムをはじめとしたアジア圏の企業が台頭しており、今後、企業間の競争がより激しくなっていくと予想されます。

 こうしたことから、下請けに依存した中小情報サービス業者の経営は厳しくなっていくと考えられます。

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