東大卒棋士のAI勝負脳

将棋の天才生む60年変わらぬシステム 片上大輔・将棋棋士6段

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 最年少棋士の藤井聡太6段(15)は高校進学後も白星を重ねており、5月予定の竜王戦に勝てば7段昇段が決まる。もし実現すれば加藤一二三9段(78)の持つ最年少記録を61年ぶりに更新することになる。近い将来のタイトル獲得を期待されているのも当然といえる。

棋士養成の「奨励会」卒業生は2割以下

 ところで藤井6段と同じく中学生でプロデビューした棋士は、これまでに4人いる。加藤9段のほか、谷川浩司9段(56)、羽生善治竜王(47)、渡辺明棋王(34)で、いずれも多くのタイトルを獲得した、輝かしい経歴の棋士ばかりだ。10~20年の幅はあるが、ある程度一定の割合で、なぜこうして天才が登場するのか。これは将棋の神様の気まぐれといった偶然ではなく、プロ棋士になるための「新進棋士奨励会」(奨励会)という養成機関のシステム自体に「秘密」があると思う。

 プロ4段になるためには、基本的には奨励会に入会し、そこを卒業する以外に道はない。奨励会受験者は最低でもアマチュア高段者の実力が必要で、受験年齢に下限はないがおおむね小学校6年生~中学校1年生の12歳前後の少年が多く、最近はさらに低年齢化の傾向にある。これは将棋界のトップになるためには若くしてプロデビューすることが望ましく、早くプロになるためには小さい時から奨励会に入会しておかねばならないという考えからだ。合格できそうにない子は、プロ棋士の師匠が受験を断念するよう諭す場合も多い。「思い出作り」の受験は存在しないのである。

 この時点でかなりの難関であり、試験方法は受験者同士での対戦と、その後の現役奨励会員との対戦のと2段階で、二重にふるいにかけられる。2017年度は東京と大阪に分かれ計55名が受験し合格者は20名だった。棋士を目指す者の多くは全国から集まった強い子供たちを前にスタート地点に立つことさえなく夢破れていく。後にタイトルホルダーとなった棋士が最初は不合格だったケースもある。

 入会しても順調にキャリア形成していけるわけではない。基本的に6級からスタートし、月に2回行われる例会の成績によって一歩ずつ階段をのぼっていかなければならない。飛び級はなく、対局の結果以外の要素が考慮されることもない。純粋な盤上の勝負のみの世界である。3段まで昇進すると、半年に1度のリーグ戦(3段リーグ)で、上位2人ずつ、年間4人だけがプロ棋士として認められる。最終的に奨励会を卒業できるのは入会者のうち2割に満たないだろう。3段リーグにも年齢の下限はない(上限は原則満26歳)。

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