御社の意思決定がダメな理由

企業突然死の根本原因は「経営不全症候群(MDS)」 野村総合研究所 根岸正州、森沢徹

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MDSが増えているのはなぜか

 なぜ、最近、経営不全症候群(MDS)が増えているのか。それは、不確実性が増す経営環境では、従来のブランド力やカリスマ性、専門性、現場への権限委譲だけでは乗り切れず、経営そのものの高度化が求められるからである。この高度化についていけない企業がMDSを患い、振り落とされているのである。以下、環境がどう変化しているのか、それぞれ見ていこう(図表1-1)。

(1)経営環境の不確実性の増大

 「経営環境が不確実性を増している」というのは、従来の市場や顧客、競合、サプライヤーだけを見ていればいい状況ではなく、政治・経済・社会・技術のトレンド変化が非常に速く、これまで以上に柔軟に適応することが求められる、ということを示す。

 たとえばリーマンショック以降、英国のEU離脱、米国トランプ政権の誕生、新興国の政権交代、AI・IoTの進化など、多くの企業で経営環境における不確実性の高まりを身にしみて感じているところであろう。

(2)グローバルでの事業拡大、M&Aの課題

 日系企業によるグローバルでの事業拡大が進展し、また、グローバルでのM&Aも活発になった。この結果、戦線は拡大し、事業環境は複雑さを増している。

 多くの日系企業で、M&A後の経営統合という観点では、まだまだ十分な取り組みができていない。そもそも相手企業の経営実態もつかめていないケースまで存在する。日本的な価値観の中で、性善説に基づいて、M&Aによる新たな連邦経営を標榜する、というのが典型的なパターンだ。

 実際には、グループシナジーが生まれることを見込んで、プレミアムがついた価格で買収することがほとんどだ。つまり、買収先の経営統合をきちんと行い、コスト削減や売上向上などのシナジーを発揮しない限り、割高な買い物になることは明白だ。

 M&A実施後に買収先で巨額の隠れ損失や法令違反が発見されるリスクにも直面している。「毒まんじゅうを無意識に食べない」ようにするためにも、M&A決定時および実施後も、相手企業の情報収集・分析を行うことが欠かせない。しかし、これは非常に難度が高く、なかなか実施できていないのが実情だ。

(3)新たな競争環境の出現

 グローバルに事業を拡大していくと、グローバルトップ企業と規模やブランド力での競争を迫られることになる。途上国であれば、現地競合企業とコスト面での競争を強いられる。

 さらにデジタル化にともなって、これまでは競合と想定していなかったITベンチャーやプラットフォーマーなど、業種・業態を超えたライバル企業が出現するようになってきている。

(4)本業の衰退局面での意思決定の難しさ

 さまざまな技術革新などにより、自社の本業が衰退していく、というのはよく見られる現象だ。こうした局面での意思決定は難しい。

 たとえば、アナログ写真用フィルム産業、鉛筆産業などは、デジタル化の流れの中で本業が衰退していくことは明らかである。そうした中で、本業への投資の見極めや、他産業に舵を切るための投資のあり方など、グループ経営としての高度なインテリジェンスをそろえる必要があるのだが、これは容易なことではない。

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