デジタルトランスフォーメーションへの道

国交省がインスタで国内半島の振興に取り組んだ理由

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 地域振興の新たな方法として、国土交通省 国土政策局 地方振興課 半島振興室が取り組んだのは写真投稿サイト「インスタグラム」の活用である。2つの大学の学生が人気インスタグラマー(投稿者)と房総半島と伊豆半島へそれぞれ赴き「インスタ映え」する写真を撮影。写真を投稿して共有したり、投稿した写真をもとにポスター制作に取り組んだりするとともに都内でイベントを開催した。このデジタル指向の事業はどのような背景で企画されたのか。企画を主導した半島振興室 室長の中島壮一氏(4月に国立研究開発法人 防災科学技術研究所へ異動)に聞いた。

――インスタグラムのようなデジタル世代のサービスを活用した背景はどのようなものですか?

 半島振興室では半島振興法に対応し、地理的に不利な日本の半島部に対する各種振興施策を実施しており、その1つとして毎年、半島の地域資源に着目した調査を行い、その成果を共有する「半島のじかん」という事業を行っています。従来の「半島のじかん」ではプロの写真家の方が半島の魅力を伝える写真を撮影し、東京・銀座で写真展を開催したりポスターを制作・配布したりしてきました。半島地域へ訪問して、地元の方と振興策に関するディスカッションを行うイベントも行っています。

 しかし今回は、半島地域をあまり知らない人、それも特に若い人たちを対象にしたイベントを企画できないかと考えました。東日本大震災以来、若い人たちの目が地方へ向くようになっています。総務省の調査研究でわかったように田園回帰の傾向も出てきました。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した事業としては既にフェイスブックを活用したものを行っていますが、若い人がインスタグラムを使って、映像をきっかけにコミュニケーションを図るようになってきたという傾向を感じていました。ご存じのように、2017年は「インスタ映え」が流行語大賞になるほどでした。

 そこで、インスタグラムに写真を投稿するため、若い大学生が実際に日ごろ行かない半島地域に行ってみる。そして人気インスタグラマーの方がそこに同行すれば、若い人たちが半島地域で楽しいひとときを過ごししながら、地域の魅力を若い人の目線の写真で発信してくれるのではないかと考えたのです。最終的な企画としてまとめるまでには、手間も時間もかかりましたが、これまでにない企画になったと感じています。

――意識的にこれまでの「半島のじかん」と変えようとされたのでしょうか?

 「半島のじかん」というイベントはここ数年続けていますが、半島振興室の人員も限られるため、毎回できるだけ従来の企画との違いを出すことで、より多くの人の協力を求めようとしてきました。さらに若い人が地方に目を向けつつある最近のトレンドを受けつつ、インスタブームに乗ってみようということでできた企画です。今回は若い人を対象にしようという新たな目標を踏まえ、半島地域の外に住む人に、どのようにしたら関心を持ってもらえるかについて突き詰めました。

 従来は、半島地域の中に入り込んで撮影した地元の方々の生活写真などで半島の魅力を訴えてきましたが、そうした写真で若い人に半島地域への観光などを促すのはハードルが高いと感じていました。実際に地域に住まわれている方々の視点をもとにした写真としては優れているのですが、半島地域の外に住む方々は別の視点で半島地域を見ています。

 そもそも、3年前に半島室長になってから、都内の会場だけで実施していた「半島のじかん」というイベントを、地方と東京の両方を会場にしたイベントに変えるなど、これまでも新しいことをやってきました。好評なコンテンツを毎年、繰り返すことができれば、企画は楽なのですが、そこまでのコンテンツがありませんでしたので、「半島のじかん」という名前は引き継ぎつつ、中身を変え、変化を打ち出してきたのです。

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