御社の意思決定がダメな理由

なぜ、企業は「突然死」をするのか? 野村総合研究所 根岸正州、森沢徹

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三菱自動車のケース──繰り返される不祥事

 三菱自動車は、2000年代に入ってから、不祥事を繰り返している。2016年4月、同社は軽自動車に関する燃費データを改竄(かいざん)していた事実を明らかにした。同社は、2000年と2004年にもリコールにつながる欠陥を隠蔽(いんぺい)するという不正行為を行っており、こうした不祥事が表面化するのは3度目になる。

 データが改竄されていたのは、同社の「eKワゴン」など2車種と、同社が受託生産を行い、日産自動車が販売している「デイズ」など2車種の合計4車種で、すでに62万5000台が販売。タイヤの抵抗値などを操作し、実際よりも燃費がよくなるようにみせかけて届出を行っていた。意図的なデータ改竄であることは明らかであり、しかも、顧客である日産からの指摘で欠陥が明るみに出るなど、杜撰(ずさん)極まりない状況である。

 懲りない隠蔽体質の根底には、生活習慣病とでもいうべき、相当根深い組織的問題がある。

 2000年、自動車業界に衝撃が走った。三菱自動車がリコールにつながるような不具合を20年にわたって隠蔽し続けていたことが、同社社員の内部告発によって明らかになったのである。世界的な自動車メーカーによる欠陥車の放置は、安全性への信頼を失墜させ、同社は販売台数を大きく落とすことになった。事態を重く見た政府当局は同社に立ち入り検査を行い、最終的には同社と元経営陣らは、道路運送車両法違反の罪で略式起訴された。これを受けて同社は、再発防止策を発表した。

 しかし、わずか2年後の2002年、同社製大型トレーラーの車輪が突然外れるという事故が発生。ベビーカーを押して歩道を歩いていた母親と子どもを直撃し、母親が死亡するという大変痛ましい結末となった。事故捜査の過程において、原因は部品の欠陥であることが判明。同社が欠陥を隠蔽していた事実が再び明らかになってしまったのである。

 事故当時、三菱自動車は独ダイムラークライスラーの傘下に入っていたが、ダイムラーはこの不祥事をきっかけに追加の資金援助を拒否。三菱自動車は資金繰りの面で事業継続が困難となった。

 結局、同社は三菱グループの企業再生ファンドや外資系投資銀行などの支援を仰ぎ、6000億円規模の資金提供を受けた。これがなければ、同社はこの時点で「突然死」していたであろう。

 二度あることは三度あると言うべきか。またしても同社の不祥事が2016年に明るみに出る。同社の4車種についてタイヤの抵抗値などを操作し、実際よりも燃費がよくなるようにみせかけて届出を行うというデータの改竄が発覚したのだ。この結果、同社は日産・ルノーの傘下に入り、再生を目指すこととなった。

 この問題をどう捉えるか。当社では、企業不祥事が起こるたびに、コンプライアンスやガバナンスの体制を整えてきたが、企業不祥事は繰り返されている。これは、「生活習慣病」のように企業不祥事が組織風土の一部になってしまっているといえなくもない。さらに、なぜこのような「生活習慣病」がまかりとおるのかといえば、大きな財閥グループである「三菱村」社会の中で、村人たちが守ってくれるという甘えが染み付いているのではないかという厳しい指摘も世の中には存在する。

 ただし、「生活習慣病」という意味で、自身を振り返ってほしい。健康には悪いから、酒やタバコはやめたほうがいいという意見や、肥満は良くないとわかっていてもついつい食べ過ぎてしまう。原因を分析してもなかなか行動を変えられなかったり、一度はうまくいってもすぐにリバウンドしてしまうということも多い。

 私人に限らず、法人である企業にも、繰り返される企業不祥事を見るにつけて、そのような「生活習慣病」が存在するのではないか、と筆者は考えている。

(つづく)

根岸正州、森沢徹 著『御社の意思決定がダメな理由』(日本経済新聞出版社、2018年)、「第1章 企業の「突然死」と経営不全症候群(MDS)」より
根岸 正州(ねぎし・まさくに)
野村総合研究所 産業ITコンサルティング部 上級コンサルタント。早稲田大学理工学部環境資源工学複合領域コース卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修士課程修了。企業価値評価、経営戦略策定、グローバルでの経営管理、ガバナンス・組織改革、デジタル分析チームの組織設計、CSR/CSV、企業再生などのコンサルティングを行う。
森沢 徹(もりさわ・とおる)
野村総合研究所 コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパル。1991年早稲田大学大学院理工学研究科電気工学修士課程終了。同年、野村総合研究所入社。1996年ハーバードビジネススクールMBA終了。ロバート・S・カプラン教授に師事。大企業の本社機構変革、グローバルオペレーティングモデル構築、業績評価管理制度革新などのコンサルテーションを行っている。著書に『実践バランス・スコアカード』『バランス・スコアカードの経営』『2010年日本の経営』(いずれも共著)ほか。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、人事、人材、研修、経営

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