日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

「ソサエティー5.0」時代のソーシャルビジネスとは? 公共サービス・地方課題も革新の好機

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■第2部、パネル討論

小川氏「社会全体の最適を目指す」

 山中氏 日本のソーシャルベンチャーは数も増え、社会に対するインパクトも大きくなっている。これから先の5年、10年を考えた時、どういう方向に発展していくのか、発展していく際、どのようなキーワードで表現すべきなのか考えていく必要がある。

 小川氏 経団連を挙げて取り組んでいるのが「ソサエティー5.0」だ。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に次ぐ5番目の社会という位置付けで、ヒトやモノから日々あらゆるデータがとられている現代において、分析結果を社会に還元すれば、あらゆる資源が最適に配分され、あらゆる課題が解決されるという考え方だ。

 コンピューターが登場した「4.0」の世界は個別の問題の最適化だったが、「5.0」では社会全体の最適を目指している。例えば宅配業者。企業内部で効率化されても、日本の物流全体は効率化されていない。各業者が積載率の低いトラックを走らせれば、渋滞も生み、運転手も不足する。個別の企業や業者が最適化しただけでは社会全体は最適化されない。

 全体最適を図ることで少子高齢化やインフラ整備、都市と地方の格差といった様々な問題も、あらゆるリソースの最適化で解決することを目指している。経団連は加盟企業の憲法といえる企業行動憲章の中で、ソサエティー5.0を中心的なテーマに据えた。

工藤氏「公共サービス 民間資金で」

 工藤氏 今、日本で注目されているのが「ソーシャル・インパクト・ボンド」。公共サービスの提供を一旦、民間の投資家の資金で行い、成果が出たら税金から投資家に返す仕組みだ。普通の公共サービスは仕様書通りに民間に委託し、民間は仕様書通りにやりさえすれば代金がもらえる。これに対し、ソーシャル・インパクト・ボンドは成果連動を掲げて英国で始まった。活動の内容は任せるので成果を出してくれ、という考え方だ。

 例えば、若者の就労支援も、相談窓口やセミナーの回数は問わないが、就労という成果を出してくれ、という具合だ。日本でも昨年ようやく2件始まり、今後広げていきたいし、こうした新しい金の流れを生み出していきたい。

 山中氏 ソーシャルビジネスは今後どういう方向に発展するのか。

 工藤氏 ソーシャルビジネスの役割は課題解決だけにとどまらなくなる。既存の枠組みの中で課題を解決するというより、働き方改革に代表されるライフスタイルの見直しなど、既存の枠組みへのチャレンジの担い手として位置付けられていくと思う。

井上氏「新ビジネスの芽は地方に」

 井上氏 「ソーシャルビジネス」という表現には「もうからないでいい」という甘えを感じる。ただ、今後長期的に利潤を追求していくにはソーシャルビジネスでないと駄目だろう。過疎化高齢化、生産年齢の減少は地方に行けば行くほど最先端の課題だ。

 解決策はシェアエコノミーやロボットなど様々だが、大都市に比べ課題が見えやすく、地方から新しいビジネスが生まれてくると思う。大切なのは課題を見つけること。課題が分かれば、あらゆるツールによるアプローチが可能で、イノベーションも集まりやすい。

 小川氏 ソサエティー5.0の時代のヘルスケアを検証しているが、芽生えは確かに地方の方が多い。実証実験にしても、隣に誰がいるか分からないような大都市ではやりにくい。自治体が音頭をとり、ある程度信頼感がつくりやすいサイズ感で、新しいことを皆でやっていこうという機運を高めることが欠かせない。地方の方が新しいことは始めやすいのではないか。

 ◆パネリストの略歴
 小川尚子氏(おがわ・なおこ) 94年に経団連入会。外務省出向、在ジュネーブ国際機関など勤務。16年に現職。
 工藤七子氏(くどう・ななこ) 総合商社勤務後、日本財団に入会。社会的投資プロジェクトなど担当。17年に現職。
 井上貴至氏(いのうえ・たかし) 08年総務省入省。鹿児島県長島町副町長など歴任。17年に現職。
 山中礼二氏(やまなか・れいじ) キヤノンで新規事業の企画など担当。00年にグロービス経営大学院に参加し教員に。

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