現場発で考える新しい働き方

正社員の働き方の変容と新しい働く仕組みのあり方 弁護士 丸尾拓養

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働き方改革は働く人に改革を求めている

 2017年3月28日に「働き方改革実行計画」が策定されてから約1年が経過しました。この間、時間外・休日労働に関する36協定の見直し、恒常的な長時間労働の是正にとどまらない長時間労働の抑制、兼業・副業の容認・推進、テレワークの検討などの広い項目について、企業の取り組みが報じられています。一方で、労働者の側からはあまり動きや反応が見られないようにも思われます。残業が減ったことによる割増賃金の減少や、増大した私的時間を持て余す様子などが伝えられますが、働き方改革を積極的に活用する労働者は現段階ではまだ少数なのでしょう。

 「働き方改革実行計画」には、「『働き方』は『暮らし方』そのものであり、働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革である」との一節があります。この実行計画において改革の対象、そして変えていく主体とされるのは企業ではなく、労働者、そして国民でしょう。国民が働き方を変えることを求められているのです。「働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土を変えようとするものである」ともされますが、企業の「働かせ方」を変えることは手段にすぎず、国民の「働き方」を変えることが目的であるように読めます。

 この実行計画の中では、「画一的な労働制度」が「壁」として位置付けられています。この「画一的な労働制度」とは、明確には書かれていませんが、正社員制度のことでしょう。正社員制度のために、非正規雇用者が「頑張ろうとする意欲をなくす」ことになるとします。また、正社員制度には長時間労働があることで、仕事と家庭生活との両立が困難となり、少子化の原因となり、 女性のキャリア形成を阻むとします。「長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、 女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく」との一節もあります。

 働き方改革実現会議に先行する規制改革会議の第27回雇用ワーキンググループ(2014年8月7日開催)において厚生労働省が提出した資料に、「正規雇用と非正規雇用の労働者の推移」と題する棒グラフがあります。これによると、1985年の正規雇用者数は3343万人、非正規雇用者数は655万人で、非正規雇用者の率は16.4%でした。これが1995年には、正規雇用者数は3779万人、非正規雇用者数は1001万人で、非正規雇用者の率は20.96%になりました。2005年には、正規雇用者数は3375万人、非正規雇用者数は1634万人で、非正規雇用者の率は32.6%になりました。

 同資料に記載されていた「現在」の年は2013年ですが、正規雇用者数は3294万人、非正規雇用者数は1906万人で、非正規雇用者の率は36.7%でした。この変化について、資料には、「正規雇用は、95年から05年までの間に減少し、以降その数はわずかに減少。非正規雇用は、95年から05年までの間に増加し、以降現在まで緩やかに増加(役員を除く雇用者全体の36.7%)」との記載があります。「95年から05年までの間」などの部分は赤字となっています。

 これらを見ると、正規雇用者数についても、1985年と2013年とを比較すれば、それほど大きくない減数なのでしょう。非正規雇用の率が上昇したのは、正規雇用が非正規雇用に置き換わったのではなく、非正規雇用の数が約3倍に増加したことが主たる原因です。これにより、正規雇用と非正規雇用を合わせた労働参加者の数は、1985年の3998万人から2013年の5200万人へと増加しています。そして、働き方改革はさらなる「労働参加率の向上」を求めています。

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