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「組織IQ」を高めてプロジェクトの失敗を防ごう マネジメントソリューションズ 横江真由美氏

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 こうしたことが起きる原因は、コミュニケーションを推進するための基本的な活動が実施されていないためです。上記例でも太字で示しましたが、大きく分けて『明確化』『文書化』『共通認識化』という3つのキーワードでプロジェクトの活動を点検してください。

(1) 明確化

 まず、みなさんのプロジェクトにおいて、プロジェクトの実施に必要となる情報は明確化されていますか。ここでいう明確化とは、誰が、いつ、何を、なぜ、どのようにしたといった事実を基にプロジェクトの状況を把握することです。

(2) 文書化(←(1)で明確にしたことを文書化)

 また、明確化した事実に基づくプロジェクトの状況は、プロジェクトメンバーが誰でも参照できるように文書の状態にします。必要であれば図表も加えて、第三者が読んで、誤解がないようにするのがポイントです。

(3) 共通認識化(←(1)(2)で整理した内容を全員で共有)

 明確化・文書化したプロジェクト状況は、プロジェクトチーム内のコミュニケーションパス(連絡経路)を通して展開し、メンバーに共通意識を持ってもらいます。形式的な情報展開(メールや定例会議など)だけでなく、重要事項については顔を突き合わせて認識を深める機会を持つことが必要です。また、何度も繰り返すことが大切です。

 プロジェクトメンバーの多くは通常の会社の業務もこなしながらプロジェクトに参加しています。「こんな暇はない」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、コミュニケーション活動については、プロジェクト内向け、プロジェクト外向けをしっかりと計画すべきです。それらが、そもそも計画されず、リソースも確保されない場合、プロジェクトに手戻りが発生し、スケジュールが遅延することが少なくありません。

 やはり「急がば回れ」なのです。

 ちなみに、プロジェクト内向けとプロジェクト外向けの2つのコミュニケーション活動をそれぞれ計画するのは、目的がそれぞれ異なるためです。プロジェクト内向けのコミュニケーションは、プロジェクトチームを1つにまとめ上げるためのものです。プロジェクト外向けのコミュニケーションはそのプロジェクトの影響を受ける組織を1つにまとめ上げるものです。

 コミュニケーション活動とは、プロジェクトや組織を「1つにまとめあげる」ものだからこそ簡単なことではありません。だからこそ手間暇がかかるものであり、手間暇をかけるべきものです。よって、きちんとプロジェクトのタスクとして計画し、スケジュールとリソースを確保することで、「もともとの計画に沿って無理なく確実に実行していく」ことが必要です。

「当たり前」「普通」のこともあえて伝える組織に

 以上で個々のプロジェクトにおける対策は行えますが、そもそもコミュニケーション活動を軽視するような状況は組織IQが低いと言えます。組織IQを意識的に高めるようにしなければ、同じような失敗を繰り返すでしょう。

 現在、日本の多くの組織において組織IQが低いのは、「当たり前」「普通」といった暗黙の了解に頼りがちな姿勢が強いためです。

 私がそう考えるのは、実際のプロジェクトで「普通は誰もそう思いませんよ」「普通、その仕事はXXチームの仕事じゃないんですか?」「そんなの当たり前に考えればわかるでしょ?」といった言葉をよく聞くためです。この言葉を聞いたプロジェクトでは、たいていトラブルが生じます。

 具体的には、メンバーの勝手な「当たり前」「普通」という思い込みによって間違った方法でタスクが行われ、あとでやり直しが発生するようになります。そして、スケジュールが遅れた状況で「当たり前」「普通」と言っていたことの本当の中身について話し合いをするため、プロジェクトがさらに遅れるという状況に陥ります。

 しかし、そもそも「当たり前」「普通」とは何でしょうか。一昔前は、「当たり前」「普通」は通じたかもしれませんが、今や私たち1人ひとりが受け取る情報や経験は多様で、国内においても多様性(ダイバーシティー)は既に存在しているのです。ましてや他国で育った人とも協業するプロジェクトでは、「当たり前」「普通」は存在しないと心得るべきです。方法やルールだけでなく、価値観も違います。

 大きなプロジェクトであればあるほど、より多様な価値観のメンバーが協業していかなければなりません。そこでは、「当たり前」「普通」という言葉、さらには言葉さえ不要という日本人特有の「あ、うん」の呼吸はプロジェクトにとってリスクそのものでしょう。

 これからは、前述した『明確化』『文書化』『共通認識化』という3つのキーワードを軸に、組織IQを意識的に高めたいものです。

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