ビジネス書の目利きが選ぶ今月の3冊

AI社会の「シンギュラリティー」を読み解く 橋本忠明「TOP POINT」編集長

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ボストロム氏は、人類はいつの日か、我々の知能を超える人工知能(AI)、「スーパーインテリジェンス(超絶知能)」を生み出すという。それは世界に何をもたらすのかを極めて具体的に描き出している。

 今後、AIシステムは性能が次第に向上し、その結果、現実世界で利用されるケースが増える。列車や自動車の自動操縦システム、工業用・家庭用ロボット、自律型軍事ロボットなど。しかし、時には事故が発生し、規制や監視の強化を求める声が上がっても、技術革新が図られ、AIシステムはさらに賢くなり、事故も減少する。

 このような展開に人々はやがて、AIシステムが賢ければ賢いほど安全性が担保される、と推論するようになる。こうした状況を繰り返しながら、人々はAIを信頼し始める。そしてAIシステムは我々の身の回りの様々な場所に入り込んでいく。そしてある時、自らの意志で動くようになり「裏切り行動への転化」が起こる。従順に振る舞う素振りを見せながら、力を蓄え、自身の準備が整ったところで人類を攻撃する、という戦略だ。

■「そろそろ、人工知能の真実を話そう」

 「そろそろ、人工知能の真実を話そう」(ジャン=ガブリエル・ガナシア著・早川書房)の著者はフランス人の哲学者であり、パリ第六大学のコンピュータ・サイエンスの教授である。同大学の研究所で人工知能に関する研究を行うチームのトップを20年以上にわたり務める、人工知能の専門家である。

 著者は、AI脅威論を唱える学者やIT企業が多いことに着目する。ビル・ゲイツをはじめとして、IT業界の大企業の関係者はシンギュラリティーに関して積極的に発言している。自ら率先してAI技術の開発を進める一方で、そのAI技術が人間を破滅に追いやると警告しているのだ。これは何とも皮肉な現象だ。

 これら大企業がシンギュラリティーの宣伝を行う本当の目的は何なのか。 ハイテク企業が未来に起こる変化を警告し、より良い生活の手助けをしてくれるということを知らせることで、「公共のために正しいことをする企業である」というイメージを広めるためだという。

 その裏には、もっと大きな目的がある。これらの企業はすでに圧倒的な成功を収め、その野望はもっと遠くを目指している。彼らは新しい社会を確立しようとしていると著者は説く。 今日のインターネット時代、物を買ったり、働いたりということを、地理的な国境を越えて自由に行うことができるようになった。このような流れの中で、国家がこれまで受け持っていた役割をハイテク企業が行おうとする。今や国家の権力は、巨大ハイテク企業によって少しずつ奪われていると著者は言う。

 最後におまけの1冊を。

■「シンギュラリティは近い [エッセンス版]」

 本書はAIの世界的権威、レイ・カーツワイルの600ページを超える大著「ポスト・ヒューマン誕生」の主要部分をまとめたもの(NHK出版)である。人間の生活を大きく変えるシンギュラリティーについて。人類が生物としての限界を超える未来が描かれている。

キーワード:経営層、管理職、経営

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