デジタル化で飛躍するASEAN

スマートネーション「シンガポール」の挑戦 日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部 アジア大洋州課 源 卓也氏に聞く

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 シンガポールが国を挙げたデジタルイノベーション戦略を推し進めている。その名も「スマートネーション」構想。至る所にセンサー・ネットワークを張り巡らし、各種手続きのデジタル化やキャッシュレス化を進めるほか、スタートアップ創出のエコシステム構築にも余念がない。スマート構想を進める背景や今後の展開について、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部 アジア大洋州課の源卓也氏に聞いた。

少子高齢化をスマート化で克服

――シンガポールは東南アジアの中で早くから産業高度化を進め、いち早く先進国の仲間入りを果たしています。なぜ今、国を挙げたイノベーション戦略を進めようとしているのでしょうか。

 小国で資源も少ないシンガポールは建国以来、海外から有力な企業や技術を取り込み、2000年代までは高い経済成長率を達成してきました。ただ、世界経済危機後の2010年代に入ってからは成長が落ち込み、ここ数年は2~3%の低空飛行が続いています。

 2010年、政府は労働生産性の向上による経済成長の達成を目標に掲げ、それまでの積極的な外国人受け入れ策を転換しました。その後、政府は外国人雇用規制を徐々に厳格化し、外国人の流入の伸びを抑制する一方、労働生産性向上に向けてまい進し始めました。その方策として、ロボットやAI(人工知能)などのデジタル技術の活用を目指しています。

 また、シンガポールの構造的な課題の一つが、少子高齢化です。出生率は1.24(2015年)と日本の1.45を下回り、人口に占める65歳以上の割合は2030年には4人に1人に達すると見られています。経済中心から、国民の健康増進や社会保障にも対応した政策が求められているのです。

――具体的にはどんな構想を進めているのですか。

 2014年にリー・シェンロン首相が国家戦略として情報通信技術(ICT)を積極導入し、経済や生活水準の向上を目指すスマートネーション構想を打ち出しました。政府内には、この構想を推進するための機関として、スマートネーション・デジタル政府グループ(SNDOG)を設置。(1)国家センサー・ネットワーク設置、(2)国家デジタル身分証明システムの構築、(3)キャッシュレス社会の実現に向けた電子支払いの普及拡大、の3つを優先プロジェクトとして進めています。

――(1)は具体的に何に役立てようとしているのですか。

 街頭などにカメラやセンサーを設置し、人や車の動き、気象情報といった、あらゆるデータを集めて渋滞解消や災害防止などに役立てようとしています。

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