キリスト教からよむ世界史

「融和の法王」と「分断の米大統領」 元駿台予備学校講師 関 眞興

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 現在、世界では70億を超える人間が様々な環境で、政治的・経済的・社会的な不安や不満を抱えて生きています。宗教者の果たす役割に期待が膨らむ一方で、宗教への不信感も大きくなっています。15億ともいわれるカトリック教徒の頂点に立つローマ教皇の発言は、キリスト教徒以外にも大きな影響を与えています。カトリック教会内にも保守派から穏健派まで様々な勢力が存在します。教皇はこの時代をどのように導いていくのでしょう。

■教会巡るスキャンダルや事件が続発

 ベネディクト16世(在位2005~2013)は78歳の高齢ながら、ヨハネ・パウロ2世の側近として活躍してきた実績が買われて教皇に選出されました。

 ドイツ人の教皇は、11世紀中頃、グレゴリウス7世の改革に先立って活躍したヴィクトル2世以来です。ベネディクトの名は、第1次世界大戦中のベネディクト15世や、ヨーロッパ修道院の原点を築いた聖ベネディクトの業績を引き継ぐ意思の表れだといわれています。

 ベネディクト16世の行動は、ヨハネ・パウロ2世を継承しているだけあって、活発でした。故郷のドイツをはじめ、ポーランドのアウシュヴィッツなど各地を訪問しました。アウシュヴィッツ訪問はヨハネ・パウロ2世に続き2人目になりますが、ドイツ人教皇としての訪問は意味深いものがあります。

 トルコとイギリスへの訪問も注目されます。トルコはイスラム国家ですが、教皇のイスラム国家訪問は初めてのことでした。このとき、エルドアン首相はもちろん、ギリシャ正教会の総主教とも会見しました。また、イギリスとは、16世紀にエリザベス1世が首長令でイギリス国教会を確立して以来、400年ぶりの関係改善となりました。

 このベネディクト16世が自ら退位を申し出た原因はわかりません。年齢のため、職務に耐えられなくなってきたというのが一般には説明されていますが、もっと現実的な理由があったと思います。

 近年になっても、教会を巡るスキャンダルや事件が次々に起きています。ヴァチカン銀行を巡る不正取引疑惑がありました。1975年にヴァチカン銀行の中心的取引銀行であるアンブロシアーノ銀行の頭取に就任したカルヴィは、アメリカやイタリアのマフィアやヴァチカン銀行の頭取などと組んで、マフィア絡みのマネーロンダリングや不正融資を行ったとされています。

 1982年にはアンブロシアーノ銀行が破綻、その頭取のカルヴィが亡命先のロンドンで暗殺され、この事件を捜査していた警察関係者や、歴代の頭取秘書も死亡するなど不審な事件が起きています。全容は現在なお明らかになっていません。

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