はじめての著作権法

どれが著作権侵害?文章やイラストでの裁判例を見る

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まとめ

 本当はもっともっともっと沢山具体例を見て、イメージをつかんでいただきたいところなのですが、この程度にしておきたいと思います。

 さて、今回筆者がお伝えしたかったことは、著作権法上、4つの要件によって一応の歯止めがかかっているとはいえ、それでも「著作物」のハードル自体はそう高いものではないこと、そのため、プロのクリエーターの手による商業用コンテンツだけでなく、素人が作成したちょっとした文章やイラスト等でも「著作物」として保護を受ける可能性があるということです。

 たとえば、我々が日常何気なくスマホで撮影し、フェイスブックやインスタ等のSNSに投稿している写真の多くは「著作物」に当たります。著作物や著作権というと、どうしても少し特別な感じがしてしまうわけですが、決してそんなことはなく、実はその門戸はとんでもなく広く、我々は日々著作物を量産しているのです。

 その意味において、我々現代人の身の周りは多くの著作物で溢(あふ)れているといえ、我々の日々の生活は、好むと好まざるとにかかわらず、著作権とは切っても切れないものだということが言えます。特にインターネット上は、各種画像やテキストなどなど、著作物だらけであるといっても決して過言ではありません。このように著作物が身の周りに溢れているということは、見方を変えれば、常に著作権を侵害してしまうリスクが潜んでいるということであり、著作権を侵害しないよう、あるいは必要以上にビクビクすることがないよう、私たちは、著作権法に関する正確な知識を習得する必要があるのです。

 次にもう1つお伝えしたかったことは、「著作物」かどうかという判断は、時として大変難しいということです。今回、実際に裁判で著作物かどうかが争われた事例を色々と見ていただきましたが、「何でこっちが著作物であっちが著作物じゃないんだ?」と納得がいかない人もいるのではないでしょうか。ただ、繰り返しになりますが、著作権法上、著作物かどうかに関して、「○文字以上の文」などといった客観的で明確な基準は書いてありませんので、どうしてもケースバイケースで裁判官(いうまでもなく、いつも同じ裁判官が判断するわけではありませんし、何より裁判官はAIではなく血の通った人間ですので、常にブレのない判断をするとは限りません)がどう判断するかに左右されるという側面があります。

 したがって、たとえば誰かに勝手に文章やイラスト等を使われたという場合に「けしからん!! すぐに利用をやめさせたい!! 訴えてやる!! 」などとカッとなってすぐにクレームを入れるのではなくて、果たして勝手に使われてしまったものは、著作物と認められるようなものなのかということを、まずは過去の裁判例等に照らして、そして時に著作権に詳しい弁護士に意見を求めるなどして、冷静に考えてみる必要があります。

 また、反対に、誰かから、「勝手に私の作品を使いやがって著作権侵害だ! 損害賠償しろ!! 訴えるぞこの野郎!!」などと言われた場合も同様であって、「著作権侵害してしまい、申し訳ありません。許してください」などとすぐに非を認めるのではなく、果たして無断利用してしまったものは著作物と認められるようなものなのか、ということを、短い文章や単純なイラスト等の場合では特に、一旦冷静に考えてみる必要があるわけです。

 残念なことに、世の中的には、単にアイディアが共通するにすぎない場合を含め、著作物とは認められないようなものの無断利用についても、あたかも著作権侵害であるかのごとく"炎上"する傾向にあるのが最近のトレンドです。また、こうした法的には正しくない"炎上"に乗っかった論調のメディア報道も散見されます。是非ネットの声やメディア報道に惑わされず、冷静な目で冷静な判断をしていただきたいと思います。

池村 聡 著 『はじめての著作権法』(日本経済新聞出版社、2018年)、「第2章 著作物って何?」をもとに編集
池村 聡(いけむら・さとし)
弁護士(森・濱田松本法律事務所所属)。1976年群馬県前橋市生まれ。99年早稲田大学法学部卒業、2001年弁護士登録。09年文化庁著作権課出向(著作権調査官)。主な著書に『著作権法コンメンタール別冊平成21年改正解説』、『著作権法コンメンタール全3巻』(共著)など。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、イノベーション

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