デジタルマーケティング 今を読む

顧客を創出 「AIファースト」の衝撃 ボストン・コンサルティング・グループ 森田章パートナー

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

■「カスタマーセントリック」推進 組織の縦割り防ぐ

 今お話しした小売店のターゲティングというテーマでは、国内でも新たな動きが出始めている。川上(メーカー)と川下(小売り)がデータを相互に活用する連携が進んでいる。詳しい内容は次回以降お話したいと思う。

 話を元に戻そう。先ほどの世界的流通大手の事例からは重要な視点を導き出すことができる。購買行動によって消費者個人を浮き彫りにする。つまり「見える化」することがどのような意義を持つのか。そのことを考えてみたい。

 顧客データを宝の持ち腐れにしないため、いかにすればよいのか。その前提とも言うべき基本原則がある。カスタマーセントリック(Customer Centric)だ。顧客を中心に据える。当たり前のことなのだが、その中心からズレてしまっていることが多い。

 インタラクティブなネットの特性が生かされるはずのデジタルマーケティング。だがデジタルを単なる「広告枠」と捉えてしまうと、往々にしてマーケティング部門が「マスマーケティング」と「デジタルマーケティング」の縦割りになり、相互に連携しないことになりがちである。

 こんな組織を想像していただきたい。ブランドマネジャーを兼ねるマーケティング部長の下に、マスマーケティングの担当者とデジタルマーケティングの担当者が並立している。このマーケティング部長はデジタルマーケティングとマスマーケティングを「広告枠」だと思い込んでいる。マスマーケティングの役目はブランディング、つまり種まき。一方のデジタルマーケティングは刈り取り…という具合だ。ブランディングは費用がかかる。そこで、デジタルマーケティングの担当者に対しては予算内で効率的に顧客を獲得するように要求する。

■消費者は「オン」と「オフ」を複雑に行き交う

 この構図ではデジタルマーケティングの担当者は、より効率のよい見込み客にアプローチするリターゲティング広告(リタゲ)の利用に偏りがちになる。自社商品のサイトを訪問した人の閲覧履歴を追跡し、一度見た商品や類似商品の広告を繰り返し表示する手法だ。

 だが、ラストクリック(購入などコンバージョン直前のクリック)のみを重視するリタゲは先細りになりやすい。何度も繰り返される内に反応はなくなり、さらには消費者が不快になって逆効果ということもあり得る。

 消費者の購買行動を詳細に分析すれば、マスとデジタルで縦割りされた組織が現実に即していないことがさらによく分かる。消費者はオンラインとオフラインを複雑に行き交っているのだ。

 商品との出会いは陳列棚の時もあればEC(電子商取引)サイトの時もある。あるいは口コミかもしれない。検討の段階では店頭で商品に触れることもあれば、SNSでユーザーの声を収集することもある。その両方という人も多い。購入場所も状況によって変化する。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。