フィンテック キーパーソンに聞く

東京・大手町発のエコシステムは想定超える拡大 三菱地所 ビル営業部 統括 堺美夫氏

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 東京海上日動火災保険、中部電力、農林中央金庫などの大企業がパートナー会員として参加しているのも強みだ。大企業とのミーティングが容易になり、頻度も増える。堺氏は「(保険分野とテクノロジーの結合である)インシュアテックの分野であればフィノラボの中でその傘が広がって有志が集まります。スマートシティーなら三菱地所が、という風にいろいろなコンソーシアム(連合)が立ち上がり、その過程で大企業とスタートアップ企業の垣根がなくなるでしょう。新しいものが古いものを駆逐するのではなく、新技術をテコに産業脱皮のような形で輪が広がる循環が数年間続くはずです」と読む。

 誕生からわずか1年半しか経ていないフィノラボだが、事業が育ち、無事巣立っていったスタートアップ企業も出始めている。たとえば、生体認証システムなどを手がけるLiquid(リキッド、東京・千代田)。2016年2月のスタート時から入居、当初4人ほどでスタートしたがすでに50人以上の規模に成長した。ほかにもAIなどを手がけるPreferred Networks(プリファードネットワークス、東京・千代田)社が大手町ビルに入居し、日本の大手自動車、工作機械メーカーと組んで成長の途上にある。

「破壊」ではなく大企業プラットフォームと新技術のシナジー

 2012年までニューヨークに駐在し、ロックフェラーグループに在籍していた堺氏。ニューヨークやロンドンのほうがフィンテック分野で進んでいるとの実感をもっていたという。ちょうど2013年にロンドンの金融街に「レベル39」という施設が誕生し、スタートアップ企業と大企業の融合が進みだした。協業先の電通グループや有識者との間で、「日本はこのままでは取り残され、アジアの金融拠点が香港やシンガポールにいってしまう」という共通の危機感が高まり、同時に「大手町や丸の内のデベロッパーたる三菱地所として、東京をこのままにしておいていいのかという使命感が生まれました」とフィノラボ誕生のいきさつを振り返る。

「大手町や丸の内のデベロッパーたる三菱地所として、東京をこのままにしておいていいのかという使命感が生まれました」

「大手町や丸の内のデベロッパーたる三菱地所として、東京をこのままにしておいていいのかという使命感が生まれました」

 そもそも、三菱地所の主な事業エリアは大手町、丸の内、有楽町(大・丸・有)。ブルーチップ(有力企業)含む約4300社が本社を抱え、メガバンクや大手監査法人、弁護士事務所などもひしめく。「丸の内の大家さん」ともいわれる、最大のデベロッパーがなぜ小さなスタートアップ企業を呼び込もうと考えたのか。

 堺氏は「フィンテックに携わるスタートアップ企業は一般にディスラプティング、つまり既存の古い体制やシステムを壊して新しい利便性に変えていくというイメージがありますが、実際は金融機関などと競合するわけではなく、大企業のプラットフォームに乗っかってその利便性を向上させるという見方もできます」と説明する。

 「当初はたしかに否定的な見方もありエコシステムが稼動するか不安もありましたが、やってみると地所の基盤である『大・丸・有』とスタートアップ企業との相性が良かった。たとえば、スタートアップ企業が、大企業の持つ全国のプラットフォームに技術を乗せるというような形でシナジーを出せるのが魅力になるからです」

 やはり三菱地所が大手町フィナンシャルシティ グランキューブに開設したグローバル成長企業向けのビジネス支援施設「グローバルビジネスハブ東京(GBHT)」が、エコシステムや大手町ビルのフィノラボを巻き込みながら拡大――。三菱地所が描く未来図は予想より速く進むかもしれない。「エコシステムは想定を超えるスピードで大きくなっています。実際、フレキシブルに対応しようと2017年2月にフィノラボを拡張移転しましたが、じつはその後も2回、拡張工事をしました」と明かす。出発時2社だった入居企業も1年半ほどで約40社。堺氏は「エコシステムが累乗的に大きくなり、同時に農業などいろいろな分野に広がりをみせていくでしょう。5年後10年後には過疎化、人口減、高齢化といった社会ソリューションにもつながるかもしれませんし、その震源がこのフィノラボであってほしい」と話す。

(日本経済新聞社FIN/SUM事務局)

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、フィンテック、ICT、イノベーション

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