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シニア社会に似合う「健康と死」を問う 松下博宣氏

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 この期間の健康課題は、「なにがなんでも治してもらう」とか「病と闘う」というよりは、「いかに支え、支えられるか」や「いかに病と付き合うのか」ということだろう(※)。もちろん、「次に続く終末期をいかに迎えたいのか」という個人の構えやとらえ方にも大いに影響されるのだが。

(※)関連記事『老後を支え死を看取る、地域包括ケアの互酬精神と人材開発』

 病気障害期の生き方モデルとして筆者が注目しているのは、ある程度の疾患や障害を持ちながらも、アクティブに活動する人々が増えているということだ。

 筆者は持久系スポーツ(自転車ツーリング)が好きなのでこういう話ばかりになってしまうが、91歳の米国人ハリエッテ・トンプソンさんが今年6月開催の「サンディエゴ・ロックンロール・マラソン」に出走し、見事90~94歳の米国新記録を樹立した。記録は7時間7分42秒。驚くべきは、彼女は皮膚がんの一種に罹患しており、レースの直前にも放射線治療を受けていたことだ。

 実は筆者の周囲にも、病気の治療を受け、仕事を続けながら、嬉々としてスポーツにいそしむシニアの友人がいる。読者のまわりにも、きっとこのような人たちがいるのではないだろうか。

 こうした状況を見るにつけ、「健康とはいったい何なのだ」という問いに立ち返らざるを得なくなる。

 1998年に世界保健機構(WHO)が「健康」の再定義案を発表した。それによると、「健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、単に病気あるいは虚弱でないことではない」とされる。

 この定義をあてはめたとき、前述したトンプソンさんは健康か否か。たしかに彼女は病気であると診断され治療を受けてきた。しかし、91歳の彼女は虚弱ではなく、身体的に良好な動的状態を保つことができたからこそ、見事にマラソンを完走できた。この点でトンプソンさんを「不健康」だとは決めつけられない。

 だからこそ「健康」の概念は変わってくるのだろう。いや、変わらざるを得ないのではないか。たとえば、「傷病や障害の有無にかかわらず、本人がやりたいことをやれるような状態を健康という」というように。

 こう"都合よく"健康を再定義してしまえば、ヘルシーな人々が大量に出現することになる。「私は健康です」と自他ともに認められるのであれば、気分は明るくなり、前向きにもなれるだろう。病気障害期の生き方モデルには、「何が健康か」を問い直し、元気になれるような心のあり方に気を配ることも大切である。

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