日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

SDGs時代にこそソーシャルビジネスを 慶応大学大学院特任教授/横田アソシエイツ代表取締役 横田浩一

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 2社の取り組みは、市場に投入する商品の設計段階からSDGsを意識している点で、従来のマーケティングの発想を転換したとも言えよう。これまで企業が展開してきたソーシャルマーケティングは、社会的課題を念頭に置いているとは言え、消費者に自社がどんな新たな付加価値を提供できるかを主目的にしたダウンストリーム(川下)型が中心だった。マーケティングの目的を売り上げや利益に、より重きを置いた形だ。

 一方で、アップストリーム(川上)型のソーシャルマーケティングとは、公共の利益など社会構造にも影響を与えることをより重視して市場に働きかけるマーケティング活動を示す。

 ヤマトホールディングスは全国で免許を返上した高齢者を対象に自治体と協力して「買い物支援サービス」と「高齢者見守りサービス」を実施している。これは配達中、顧客である老人の孤独死に出会ったセールスドライバーが「孤独死の高齢者を一人でもなくしたい」との思いから発案された新たなサービス。アップストリーム(川上)型のソーシャルマーケティングの発想から生まれた成功例の一つと言える。

 社会的課題に取り組んでいることを訴えるソーシャルマーケティングの手法には「社員がどの程度ボランティア活動に貢献しているか」「専門分野の社員が公的機関などにどの程度人的支援(プロボノ)しているか」といった指標がある。これらの成果指標は売り上げや利益などの財務指標と異なり、短期的には成果を評価しにくいものが多い。

 一部の企業経営者からは「投資家などからはソーシャルビジネスが利益にどう結びついているのか疑問の声も出るのでは」といった懸念も出ている。

 ただし、株式市場では最近、企業の社会分野などへの取り組みを評価するESG(環境・社会・ガバナンス)投資が広がっている。財務諸表には表れないが、企業が成長を続けるために重視すべきだとされる要素を指し、世界の投資家が注目し始めている。

 アナリストも企業の業績や財務の分析だけでなく、社会問題への取り組みを含めた事業評価に軸足を移し始めた。投資家の意識が変化してきた機をとらえ、業績・財務情報だけでなく、社会問題解決の取り組みなども併せて説明する「統合報告書」などを活用し、ソーシャルビジネスへの取り組みを積極的に情報開示する機会を増やしていく状況はもはや避けられない

 独ベルテルスマン財団などがまとめたSDGs達成度によると、日本は昨年157カ国中で11位だった。教育や産業・イノベーションなどの項目で目標を達成する一方、男女間格差や気候変動などで評価が低かった。少子高齢化や年金問題、地方の人口減少などを抱える日本は世界の中でも課題先進国といえ、その課題解決はSDGsの実現とも目標が重なる。

 課題先進国だからこそ、その課題をビジネスの力を使って解決するソーシャルビジネスのモデルを他国に先駆けて確立することで、日本の国際社会でのプレゼンスを高めるチャンスが到来している。2030年までの社会的課題解決を日本から情報発信し、世界に貢献する。SDGs時代を迎え、そんな意気込みでソーシャルビジネスに取り組んでいくべきだ。

キーワード:経営層、管理職、プレーヤー、技術、イノベーション、ICT、環境問題、IoT、SDGs

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