REG/SUM キーパーソンに聞く

サイバースペースの規制、官民学で議論を NEC FinTech事業開発室長 岩田太地氏に聞く

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

哲学や倫理にさかのぼって考えなければならない

――新しい時代の規制も政府の仕事ですか。

 ルールを作るパブリックセクター(公的部門)との連携は必要だが、パブリックセクターだけでやる仕事ではない。プライベートセクター(民間部門)や研究者との連携が欠かせない。その際、まずは規制で守る基本的な価値観とは何か、哲学や倫理にさかのぼって考えなければならない。金融であれば金融機関、規制当局、テクノロジー会社、弁護士、法学者などが討議し、価値観に関し共通認識を持つ場を設けるのがベストだろう。NECは賛同してくれる関係者を募り、官民学の討議の場作りに積極的に取り組みたい。その後、技術面でも貢献できる。特にドイツ・ハイデルベルクにある当社の欧州研究所は、ビットコインが登場した当初からセキュリティーの脆弱性やプライバシーの問題について長く研究してきた実績がある。ブロックチェーンを規制可能にする研究にも取り組んでいる。

――一般利用者はどうなりますか。

 政府が発行した証明書でなくても個人が身分証明できるようになれば、利用者にはプラスになる。金融機関にはKYC(本人確認)という規制がある。これは金融機関にとっても負担になっているし、利用者にとってもオンラインで手続きが完結しない、似たような手続きを複数の金融機関にしないといけないといった問題がある。テクノロジーによってこうした課題を解決できる可能性がある。現在、日本取引所グループ(JPX)が提供する分散台帳技術の実証実験環境で金融機関とともにKYCに関する解決策に取り組んでいるのも、そうした背景がある。

――金融機関の本人確認というと、一部の人を排除するようなイメージがあります。

 たしかに今は、政府の証明書を持っていない人は銀行口座を開設できない、開設しにくいという環境になってしまっている。しかし本来のKYCの目的はそこではなく、リスクベースでしっかり管理し、必要な人には口座開設してあげるというインクルーシブな(包み込む)発想に基づく。知り合いに、欧州連合(EU)域内に逃れてきた難民に銀行口座を開設するというビジョンを持つ起業家がいる。目指す世界観は一緒だ。1つの機関の信用発行に頼らない分散型、取引の履行や犯罪者と関係ないことを自分で証明できる自己証明型の2点がデジタルアイデンティティー(電子的身元証明)の方向性として注目されており、実装していきたい。これは一般利用者にとっても便利で、たとえば銀行口座を一度開設してしまえば、住宅ローンや保険を申し込むとき、健康や就労の状態を自分で証明できるといったことも、テクノロジーを使えば可能になる。

(木村貴)

キーワード:経営層、管理職、プレーヤー、経営、企画、技術, イノベーション、フィンテック

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。