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サイバースペースの規制、官民学で議論を NEC FinTech事業開発室長 岩田太地氏に聞く

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 仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)をかたる詐欺の横行、コインチェック(東京・渋谷)で起きたNEM(ネム)の巨額流出などをきっかけに、仮想通貨に対する規制強化論が強まっている。仮想通貨をはじめ、新たなテクノロジーを活用したサービスへの監督・規制はどうあるべきか。NECのFinTech事業開発室長で、レグテック(規制とテクノロジーの融合)にも詳しい岩田太地氏に聞いた。

通貨そのものがデジタル化した世界は次元が異なる

――仮想通貨には逆風となる出来事が相次いでいます。

 個々の出来事は調査や検討が必要だが、大きくとらえると、通貨のやり取りがサイバースペース上で経済活動として行われる時代になり、規制のあり方をあらためて考える時期に来ていると思う。メディアの世界でもインターネット上で個人が自由に情報を取捨選択できた頃は規制はいらなかったかもしれないが、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が世論工作の道具として使われる可能性が生まれ、規制の必要性が議論されている。経済活動の場合もインターネットを通じクレジットカードで決済する世界と、通貨そのものがデジタル化してブロックチェーン(分散型台帳)技術でやり取りされる世界では次元が異なる。

――新たな時代の規制はどうあるべきでしょうか。

 米法学者ローレンス・レッシグ氏が著書「CODE(コード)」(1999年刊)で提示した考えが参考になる。重要なのは法とアーキテクチャー(構造)の区別だ。実世界は法によって規制されるが、サイバースペースではコードによる規制が必要になる。法はルールなどを言語の形で設定し、事前に人々の意識に働きかけるコミュニケーション型の規制で、違反には事後に制裁を加える。一方、アーキテクチャーはコード(プログラミング言語で記述されたテキスト)で整理されていて、言語的なコミュニケーションを経ず、直接・間接に行動を促す。アーキテクチャーの活用はサイバースペースに限定されず、昨年、ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者、リチャード・セイラー氏が提唱する「ナッジ(小さな誘導)」はその一種だ。

――金融への規制は何がポイントですか。

 仮想通貨ビットコインを考案したサトシ・ナカモト氏(と名乗る人物)がネット上の論文で明らかにしたのは、(個人が直接やり取りする)P2P取引で、信用できる第三者機関がなくても、ブロックチェーンによって二重支払いを防ぐことができるというところまでにすぎない。仮想通貨を(円やドルなど)法定通貨と交換するといったことは論文では一切触れられていない。まずはシステム全体のセキュリティーをきちんと考え、デザインしないといけない。その後、規制する正しいコードを誰が書くか、どうやって決めるかといったガバナンス(統治)の問題を詰めるという話になるだろう。

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