REG/SUM キーパーソンに聞く

法務のデジタル化、日本は挽回の好機 AOSリーガルテック社長・佐々木隆仁氏に聞く

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 日本経済新聞社は12月20~21日、「レグテック(規制とテクノロジーの融合)」をテーマにしたグローバルイベント「REG/SUM(レグサム)」(=RegTech Summit)を実施する。開催に先立ち、参加企業・団体のキーパーソンに注目テーマや最新動向などを聞いた。IT(情報技術)を利用した法律関連サービス、リーガルテックは広い意味でレグテックの有力分野に位置づけられる。日本における同分野の草分け、AOSリーガルテック(東京・港)社長の佐々木隆仁氏は、日本の法務のデジタル化が海外に比べ大きく遅れた現状に警鐘を鳴らす一方で、今は挽回の好機でもあるとみる。

海外の大規模な展示会にショック

――今の事業を始めたきっかけは?

 1989年に大手コンピューターメーカーの開発部門で仕事を始めた頃、まだインターネットが出現する前、ネットワーク時代が確実に来るという見通しの下、各社は激しい開発競争をしていた。絶対にダウンせずデータが飛ばないコンピューターを作るというプロジェクトに6年くらい携わったが、実際にはコンピューターは大切なデータをためるときに問題が起こり、デジタルデータが消えてしまう構造的な欠陥を持つ。ハードウエアが変わっても本質は変わらない。ただ一方で、失われたデータも技術的に何とか復旧することは可能だということも、当時の経験から知った。それが今の事業を始めるきっかけとなっている。

――事業の柱は?

 主に3つある。企業で不祥事や訴訟があった場合、都合の悪いデータは多くの場合消されている。それをデジタル証拠として検出していく事業を行うため、2012年にAOSリーガルテックを立ち上げた。データを保存する事業を推進するため、AOSデータを2015年に創設。クラウド上にすべてのデータを保存する「AOSBOX」というサービスを提供している。同年、AOSモバイルという会社も始めた。今はビジネスのコミニケーションの主流はメールだが、これからは海外のようにビジネスチャットやショートメッセージが中心になるとみて、それらのサービスを提供している。

――リーガルテックで先行する海外とはかなり開きがありますか?

 6年前、米国でリーガルテックの大規模な展示会を訪れたことがある。ホテルを貸し切り、多くの弁護士や企業関係者が集まる様子にこれはすごいとショックを受けた。日本では捜査機関から裁判に使われるデジタルデータの調査を頼まれた際、膨大なデータをすべて紙で印刷してくれといわれた。半信半疑で2トントラック2台分のデータを紙にプリントアウトしたところ、捜査担当者たちが一生懸命読む。あまりにも日米の差が大きすぎると感じた。

 当時米国では恐ろしい勢いでテクノロジーの変化が法務サービス市場に押し寄せており、これからは日本でも法務がIT化を進めなければダメだと弁護士事務所に説いて回った。ところがそんな話をしても弁護士の先生たちは「米国は米国、日本は日本だよ」と、紙と鉛筆を手放さない。これはまずい、自分が啓蒙活動をやるしかないと決意した。

 その一環で「リーガルテック展」を毎年開いている。2回目で小泉純一郎元首相を講師に招いた際、法律に関係のないエネルギー問題の話が続きハラハラしていると、やがて「リーガルテックも啓蒙は大変でしょうが、がんばってください」と励ましてくれた。米国ではリーガルテックのベンチャーは1000社を超えるが、日本では数社しかない。もっと広げる必要がある。

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