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レグテック、国家戦略含めたビジネス拡大の礎に 新日本有限責任監査法人 金融事業部パートナー 小川恵子氏に聞く

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コスト削減だけでなくガバナンス強化で企業評価そのものを向上

――具体的なレグテックのサービス内容について教えてください。

 コンプライアンス対応も、従来のサンプルテストといった検証手法から、データ処理能力の大幅な改善により継続的モニタリングへとシフトし、タイムリーな全量データの検証へと進化している。具体的な例としては、マネーロンダリング対策など負荷の高い一連の規制対応のためのトランザクションモニタリングや、各種規制への準拠性確認のための同質な大量な統制機能にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用したサービスを展開している。また、大量な非構造データを含むデーターレイクの分析処理が可能となってきたことから、顧客保護や市場の健全性などに悪影響を与えるコンダクトリスクに対し、不正を含むコンプライアンス違反の兆候やリスクの高い事象のプロアクティブな発見を目的として、FDA(フォレンジック・データ・アナリティクス)を活用したサービスを展開している。またここのところ大きく進化を遂げている音声認識技術もトレーディングルームのモニタリングとしての有効性が増してきている。これら実効性を担保するために、どこにどのようなデータがどれくらいの期間蓄積され、どのように加工されているか、データに目的適合性があるか、データは十分で完全で正確か、また使用するデータに責任を持つのはだれか、といったデータガバナンスの構築支援も鍵と考えている。

――レグテックのゴールはコンプライアンス対応の強化にあるのでしょうか?

 各国金融機関はレグテックのために数千人、数十億ドル規模で経営資源を投入しており、その成果としてコンプライアンスにかかる莫大なコストの削減が可能になるだろう。また業務へのテクノロジーの導入にはプロセスなどの標準化が必要となることから、導入をきっかけに業務やチェック機能の重複が削減され効率化が実現すると考える。さらにテクノロジーをより効果的に活用するために従来それぞれの規制対応目的で重複していたコンプライアンスリスクの管理基盤が統合化されれば、結果マネジメント向けのレポート形式の統一化など、最終的にはガバナンス強化にも寄与すると考える。レグテックは、単なるコンプライアンス対応のコストとリスクの低減だけではなく、結果として企業価値の底上げをもたらすものと期待を寄せている。

コグニティブ、不正検知から各国の規制認識とリスク対策指南まで

――レグテックでは、コグニティブが存在感を増すといわれています。

 たとえば、RPAレベルであれば、人間の単純作業は任せられるが、些細(ささい)な例外でも識別できずに停止してしまい、業務の大幅な効率化に結び付きづらい。そこで登場するのがコグニティブ、つまり拡張知能だ。人間が例外的な事象を識別できるような知恵をコグニティブに教え込むことで、見分け方や判断能力などが進化していく。今後ますます増加する膨大な情報を処理するため、コグニティブなどの導入が必要な時代に来ている。

――具体的には不正を発見する際に大きな力を発揮するのですか?

 コグニティブはすでにレグテックのいろいろな分野で活躍している。不正検知もその1つで、例えばトレーディングルームで通常ではありえない不自然な会話があった場合を考えよう。単なる音声自動認識技術では言葉をそのまま認識し不適切と定義された言葉の有無を分析するだけだが、人間であれば雰囲気まで感じて何かがおかしいという隠れたサインを感知することができる。コグニティブという技術の進化により、今後さらにこのような人間の思考により近い認識や分析が可能になると考えられる。声の抑揚や、メールやSNSなどの文脈を解析し、感情の揺らぎもふまえて判断する、といった技術などがすでに実現されている。さらに世界中の膨大で常に変化を遂げる規制を網羅的に認識し、影響がある企業のサービスや部署、ビジネスラインとその影響やリスクをコグニティブにより解析する技術の開発もすでに始まっており、今後に大きな期待を寄せている。

(田中彰一)

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、AI、ICT、イノベーション

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