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ブロックチェーン、電気発明以上に破壊的技術 ボストン・コンサルティング・グループ 佐々木靖シニア・パートナーに聞く

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■ブロックチェーンは万能薬にあらず

――ブロックチェーンをビジネスで活用するとき、どのようなことを念頭に置く必要がありますか。

 ブロックチェーンを利用するタイプは、「パブリック型」と「プライベート型」の大きく2つに分類されます。パブリック型は、取引に誰でも自由に参加できるタイプです。仮想通貨のビットコインはここに分類されます。それに対してプライベート型は、認められた者のみが参加するタイプです。

 ブロックチェーンのポテンシャルを最大限に引き出そうとすると、パブリック型が合います。ビットコインの利用者が広範囲にわたるように、スケーラビリティを追求するのであればパブリック型が適します。ただし、パブリック型では利用者の範囲がどこまで広がっていくのかを読みにくく、エコシステムは不安定になる側面があります。さらに、参加者が大量になると、やり取りのデータをブロックに集約する際に要する電力も膨大になり、それなりのリターンがないとエコシステムを維持していくのは簡単ではありません。証券取引や証券決済といったところでの活用が検討されている半面、パブリック型を仮想通貨以外にどこまで広げていけるか、いまだ議論の余地があります。

 ブロックチェーンはポテンシャルから考えると、パブリック型で使うのが理想的です。例えば、金融分野にブロックチェーンを活用すると、中央銀行が要らなくなるという考えもあります。しかしながら、ポテンシャルを理想通りに発揮できるのか、明確な答えがあるわけでもありません。こうしたことから、今はプライベート型でブロックチェーンを使おうという意識が強まっています。プライベート型であれば、信頼をおけ、かつプロフェッショナルな参加者だけ、例えば現状のビジネスに対して非効率性を感じている取引先などと構成できるので、参加者数が限られていてもブロックチェーンの効果を得られるのではないかという考えです。

――プライベート型が、ブロックチェーンのビジネス応用の中心になりそうですか。

 プライベート型での検討や実証実験にシフトしている状況といえます。ただし、企業経営者として、本当にプライベート型だけでよいか、という判断を下すのは簡単ではありません。スケーラビリティを狙うのであれば、パブリック型も念頭に置くべきでしょう。企業によって、判断が違ってくると思います。

 おそらく、多くの企業はまず、自分の取引先や関連業界の企業といった近場のビジネス領域でプライベート型を試し、どこでブロックチェーンを適用できるのかを検討した上で経済的にプラスになるのであれば、次のステップとして参加者の輪を段階的に広げてパブリック型に移行することを考えていると思われます。ブロックチェーンをビジネスに適用することを考える企業にとって、パブリック型とプライベート型の切り分けは重要になってきています。

 ただ、注意すべきことがあります。ブロックチェーンには、仲介者が要らなくなるとか、トレーサビリティに優れるとか、スマートコントラクトが可能といったプラスの面がある一方で、ブロックチェーンを使わずに通常のクライアントサーバーシステムを利用する場合に比べて「本当にプラスなのか」を考えねばなりません。ビジネスの内容によっては、ブロックチェーンを用いる方がデータ処理に時間がかかったり、電力を多く消費することになったりするといったことが起こり得ます。マイナス面を凌駕するだけのプラス面があるのかを考える必要があります。何が何でもブロックチェーンを使えばいいというわけではないのです。

――ブロックチェーンを導入すれば、何でもうまくいくとは限らないということですね。決して、万能薬ではないと。

 その通りです。どれぐらいのベネフィットがあるか、実証実験を通じて各社は確認しているでしょう。例えば、「仲介者が不要になる」効果の高さを、実証実験で明確に実感できるかもしれません。一方で、トランザクションに要する時間が遅いために実ビジネスに合わないとか、電力消費が大きいとか、マイナス面も見えてくると思います。ブロックチェーンのベネフィットがどれくらいか、使える場所はどこかといった見通しを立てて実証実験し、どこくらいの経済効果があるのかを見積もらねばなりません。ブロックチェーンの実証実験に取り組んだ企業の中には、ブロックチェーンの潜在力を実感するところもあれば、期待したほどの効果が得られないところもあるはずです。今、こうしたことに、実証実験に踏み出した企業は気づきだしているところです。

――ベネフィットを模索しながら実証実験を進めているというところなのですね。ブロックチェーンのユースケースには、どのようなものが想定されますか。

 ユースケースを分類すると、まず挙がるのが通貨/送金・決済です。そして、いわゆるスマートコントラクトの取引があります。貿易取引など、実証実験を始めるという話を最近よく聞きますので、関係する企業の多くがスマートコントラクトについてメリットを感じているのでしょう。この他、不動産やデジタルコンテンツといった所有権の移転についてもベネフィットがあるとみています。ブロックチェーンによる分散台帳を使うと、結構効率的に移転などを管理できるはずです。

 想定されるユースケースはまだあります。製造業に関わるところでは、サプライチェーンマネジメントで効果が見込まれます。製造業では、原料から製品完成までの全工程の途中途中でコントラクトがあります。そこでの仲介を省きつつ、トレーサビリティを担保しながら管理できるので、現在の管理方法に比べて効率的にできる可能性は高いとみています。

 それから、昨今話題になるシェアリングエコノミーでもブロックチェーンは威力を発揮できるでしょう。例えば、ライドシェアで世界大手の米ウーバーは、ライドシェアビジネスで中央の管理者を担っていますが、ブロックチェーンを用いると中央管理者なしでもライドシェアビジネスを構築可能です。ただし、ウーバーは中央管理者の機能だけでなく地図の独自開発なども進めており、ブロックチェーンによってウーバーが不要になる、ということではありません。

 同じく、ビジネスの現場で耳目を集めているIoT(モノのインターネット)もブロックチェーン適用の有力なユースケースの1つです。IoTでは、データを取得・送受信する電子部品(デバイス)があらゆるところに埋め込まれ、デバイスが取得したデータをやり取りします。多様かつ大量のデバイスで取得したり、取り扱ったりするデータをブロックチェーンを使って取引できるようにしておけば、自律的にデータの利活用を進めることができるでしょう。

 そして、顧客などの本人認証に必要な情報、例えば生体認証情報や公共の証明書などを、改ざん困難な仕組みで管理できるのも、ブロックチェーンの有力なユースケースです。各種契約時の本人確認のための書類提出プロセスを、大幅に簡略化できます。

 こうしたユースケースは国内外で検討され、実証実験が進んでいます。実証実験を通じ、どのくらいのベネフィットがあるのかを各ケースで見定めている状況です。

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