テクノロジーインパクト2030 Picks

ブロックチェーン、電気発明以上に破壊的技術 ボストン・コンサルティング・グループ 佐々木靖シニア・パートナーに聞く

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 日経ビジネススクール(日本経済新聞社、日経BP社)では、新事業や経営を担う次世代リーダー向けに、テクノロジーが引き起こす社会や産業の大変革を予測し、それを乗り切る羅針盤となる戦略を伝授する「テクノロジーインパクト2030ブロックチェーン編」を2018年6月11日(月)に開講します。本稿では登壇する講師に、ブロックチェーンをビジネスに活用する上でのキーポイントを聞きます。

 「ビットコイン」や「イーサリアム」など仮想通貨の基幹技術として知られるブロックチェーン。適用範囲は仮想通貨にとどまらず、金融商品や不動産、製品などの取引、所有者が異なる産業機器間の情報伝達など産業分野で幅広い。企業構造や社会構造に大きな影響を及ぼすパワーを秘め、新しい産業を生む一方、ブロックチェーン導入によって消える企業が出てくるとの指摘がある。ブロックチェーンがビジネス環境に与える影響について詳しい、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の佐々木靖氏に聞いた。

――ブロックチェーンの特徴を教えてください。

 特徴は大きく2つあります。1つは、インターネットのような仮想世界に「連続性」を与えることです。現実世界では、誰がどのような取引をしているのか、やり取りが明確に分かります。しかし、インターネットのような仮想世界では、現実世界のような「連続性」が存在しません。仮想世界では、手元にあるデータがコピーではなくオリジナルであるという保証はなく、ネットでつながった先が誰なのか(正しい取引相手なのか)、そもそも人間なのか犬なのかさえ保証されていないのです。ブロックチェーンは、仮想世界に現実世界と同様の「連続性」を与えます。

 「連続性」は、アイデンティティや所有権、取引、信用、契約が有効であることをお互いに確認するための重要な土台です。ブロックチェーンによって「連続性」を手に入れることで、仮想世界においても現実世界と同様に信頼性のある取引などが可能になります。ただし、ブロックチェーンによって仮想世界の中での連続性は担保されますが、「仮想世界のAさんは現実世界の佐々木靖である」というような仮想世界と現実世界の連続性については、別の方法で担保することが必要です。

 もう1つは、ブロックチェーンが「スタック(階層)構造」を有していることです。これが、ブロックチェーンの適用分野が広範囲にわたる要因になっています。スタック構造とは、相互に連携して運用される複数のモジュールが層状に重なっている構造のことです。最下層側から汎用的なインフラ機能の基盤となるハードウエア、インターネットのプロトコルが重なり、その上にブロックチェーンの技術が載ります。ここまでを共通とし、その上層部分にさまざまなサービスに対応するアプリケーション層が重なります。ブロックチェーンまでの技術は共通なものを利用しながら、サービスに応じたアプリケーション層を変えることで仮想通貨のような金融、証券取引、不動産取引などを実現できるのです。「ビットコイン」に代表される仮想通貨は、ブロックチェーンのアプリケーションの1つにすぎません。アプリケーション層だけでいろいろなベンチャー企業がトライ・アンド・エラーできるのも大きなメリットです。

 「連続性」と「スタック構造」がもたらす変化の大きさと適用範囲の広さは、イノベーションを引き起こすパワーの源になります。このことから、ブロックチェーンは「ディスラプティブ(破壊的)」技術と言われます。BCG内ではブロックチェーンについて、「電気の発明以上に破壊的なインパクトを持っている」と捉える声すらあります。ブロックチェーンの技術的なポテンシャルを理解し、どう身に付けるかは、これからのビジネスパーソンにとって極めて重要なポイントといえます。

――ブロックチェーンは、ビジネスでどのような効用がありますか。

 ブロックチェーンの技術的な特徴を踏まえると、大きく3つの効用が考えられます。

 第1に「仲介者が不要」です。さまざまなビジネスの場面で、仲介者を経ることは多々あります。仲介者がいることで、ビジネスが非効率になっている場面は珍しくありません。そうした場面でブロックチェーン技術を使うと仲介者を不要にでき、ビジネスの効率性が高まります。

 第2に「認識とトレーサビリティ」です。ブロックチェーンを使うと、インターネットのような仮想世界でやり取りする(やり取りした)相手が誰かを認識できます。そして、ブロックチェーンはやり取りの履歴情報を電子的に記録しながら、そのデータをブロックとして集約し、数珠つなぎにつなげていきますので、過去にどういう取引があったのかを遡って確認できます。いわゆる、トレーサビリティに優れています。

 第3に「自動化」です。これは、いろいろな取引を第三者を介さずに信用を担保しながらオートマチックに完了できるというものです。契約を自動化できる、いわゆるスマートコントラクトです。契約や取引に要する時間を大幅に短縮できます。

 以上の「仲介者が不要」「認識とトレーサビリティ」「自動化」の3つの効用によって、これまでビジネスを進める上で非効率だったところが大幅に縮小、あるいは解消するといった可能性があります。その結果、新しいビジネスが生まれたり、逆に消失するビジネスが出てきたりするでしょう。