AI現場力

「デジタル大部屋」で能力を進化させる ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長 長島 聡氏

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 スピード競争に負けないためには、各部門やローカルがバラバラにゼロベースで取り組むやり方を続けるべきではない。全体を俯瞰すると過剰なことや、今やっても仕方ないことはやるべきではないのだ。日本人は目の前に自分のやれることがあると、つい取り組んでしまうが、そうした個人に閉じた頑張りは持続性に欠ける。残業が増えるなど、どこかに必ずしわ寄せが出てくるのだ。

和ノベーション時代の「大部屋」

 それよりも、かつての大部屋のように、自分のやれること、他の人がやれることを組み合わせ、役割分担したほうがいい。今ならテクノロジーを活用して、空間を共にするデジタル大部屋をリアルとバーチャルの両面から創ることができる。

 従前の大部屋は事業や部門の枠内にとどまり、集まって話す内容もいかに自社の収益に貢献できるかという数字でのつながりが中心だった。これに対して、新しい大部屋では顧客に届けたい価値が真ん中にある。誰が何を顧客に届けようとしているのか。それとも、すでに届けたのか。その結果として顧客はどのような状態にあるか。このように一連の状況をリアルタイムで見えるようにするのだ。CLM(カスタマー・ライフサイクル・マネジメント)による見える化だ。

 たとえば、みんなと一緒にやり遂げたい項目を中心にして、その目的に役立つことをランダムに思いついたまま並べる。マインドマップのような形式でそれを整理し、その1つひとつにどんな効果があるか、今までにどんな活用例があるか、その項目についてくわしい人がいるか、誰が手伝ってくれるか、いつ時間を割けるかといった情報をリアルタイムに更新していく。各機能の動きを見ながら、顧客に最も響くやり方や面白いアイデアについて議論し、新しいモジュールを開発しては試すスクラップ・アンド・ビルドの場とする。

 デジタル大部屋には顧客関連のサプライチェーンやエンジニアリング・チェーンに従事する人がすべて参加するので、人数も領域もかつての大部屋よりも拡大する。他部門が新しい試みを始めれば、それで自分がどう貢献できるかと考えたり、ほかの人に協力を求めやすくなったりするだろう。各人の動きが見える化されることで、自分の貢献度や顧客への関与の度合いが明らかになり、参加する意義やモチベーションになっていく。

 これが私の考える、知の交流を活性化させる新しいデジタル大部屋の姿であり、ぜひとも実現させたいと思っている。

デジタル大部屋のマインドマップ