AI現場力

「先読み・引き寄せ・構え」で価値を生む ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長 長島 聡氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

インダストリー4.0の世界ではすでに実践

 「先読み」「引き寄せ」「構え」を実践して新たな価値を構想し、スピーディーかつタイムリーに顧客に届けていく上で、極めて重要なのが見える化だ。それも、人材、設備、製品や技術といった供給側の見える化に加え、顧客への価値提供の履歴といった需要側の見える化も対象とした、「異次元の見える化」だ。すでにインダストリー4.0が始まった世界では、供給側の「異次元の見える化」を活用した取り組みが加速しているのはご存知の通りだ。

 たとえば、工場にある設備にさまざまなセンサーをつけて、リアルタイムで稼働時のデータを記録する。こうしたデータは機械、ライン、工場間で同期され、1つの画面上ですべて見ることができる。稼働状況や不具合の兆候など、変化があればすぐに対応し、故障する前にメンテナンスすることも可能だ。さらに、誰がどの装置を担当していたか、その際どの製品の一部となるどの部品を加工したかなど、製品の生産に関わったすべてのリソースを、タイムライン上に一覧性を持って見える化できるのだ。

 これまでは往々にして事後の結果でしか把握できなかったが、異次元の見える化が進むと、プロセスまでリアルタイムにつかめるため、課題が発生したタイミングで対処できるという大きなメリットを生み出す。人手でやるとなると負荷が大きく、それほど頻繁にできなかったデータの収集、分析、比較が簡単にできるため、これまでは意識できなかったこと、見落としていたことも瞬時に発見できるようになったのだ。さらに、AIを活用して分析すれば、無理・無駄・ムラを自動的にチェックしたり、最適なやり方も推奨してくれたりする可能性も広がる。工場が止まって顧客を待たせることはもうなくなるだろう。

 機械だけではなく、モノや人の動き方などにも、見える化の対象領域が広がっている。たとえば、ID情報を埋め込んだRFタグをつけて、無線通信で情報をやりとりしながら、モノが外から入ってきて工場を出るまでの様子をリアルタイムで把握する。サプライチェーンを見える化して、企業間をまたいで注文情報、出荷情報、入荷情報を捉える。あるいは、配送サービスであれば、荷物が出荷されたか、今はどこの拠点まで配送されたかをリアルタイムでトラッキングできるようにする。

 こうした情報を使えば、遅延が生じそうなときには顧客にあらかじめ連絡を入れるなどして、先回りした対処ができるようになるのだ。

長島聡著 『AI現場力』(日本経済新聞出版社、2017年)4章「新・顧客価値創造」から
長島 聡(ながしま さとし)
ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長、工学博士。

早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手を経て、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。

以下のアドバイザーを務める。アスタミューゼ、エクサインテリジェンス、カイゼン・マイスター、リンカーズ、カブク、ドリーム・アーツ、エクシヴィ、ベッコフオートメーション

一般財団法人素形材センター「素形材産業を含めた製造基盤技術を活用した『稼ぐ力』研究会」委員、経済産業省「ファッション政策懇談会」委員、一般財団法人企業活力研究所ものづくり競争力研究会委員。

自動車産業、インダストリー4.0/IoT をテーマとした講演・寄稿多数。近著に『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社、2015年)。

キーワード:経営層、管理職、技術、イノベーション、製造、IoT、ICT、AI、働き方改革、ものづくり

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。